5月のディスクレヴュー
05272001UK
吉田美奈子 / 扉の冬 (1973
SHOWBOAT)
★★
19歳の吉田美奈子の若々しい声が聴ける。
もちろん、バッキングはキャラメル・ママである。
洗練されたグルーヴィーなバッキングの上に乗っかるこの清々しさは、
時期を前後して同じショーボートから出た、
荒井由実の「ひこうき雲」とも共通するイノセンスである。
2000年12月に行なわれたティンパンのコンサートでも歌われた、
本アルバムの末尾を飾る「週末」の歌唱は、初期の大貫妙子とも似ている。
当時26の細野のベースもとても元気なわけで、ブイブイ言わせている。
とにかく音楽が翳りを帯びていながら、
背伸びをしているような初々しさがある。
声がソウルフルでなくても、ソウルはやはり確かにこもっている。
LARRY CORYELL / SPACES (1989
Vanguard)
★★★
1970年頃録音されたものらしいのだが、音は、ロック。
エレキギターが物凄くロック。フュージョンというには熱すぎる感じ。
ドラムスもずいぶん忙しい。とにかく聴いていると、とても気持ち良い。
とにかくギターが活躍する。とってもカッコ良い。
息をとめて、顔を歪めて、疾走するような、それでいて歪んだ顔が崩れないというか、
そんな超人的な感じ。ベースもぼんぼん鳴るし、チック・コリアのエレピも冴えている
とても音が自由で大爆発しているので、熱くなりたいときに。
疲れているときは、ヘンな方向にイカされてしまうので注意。
とくに7曲目「TYRONE」のいかれ加減はたまらないと思う。本当に、驚く。
いろんな意味でロック!ああ、ぜひ聴いてほしい。
CHARLES MINGUS /
PITHECANTHROPUS ERECTUS (1956 Atlantic)
★★
とても格好の良いものは少し視点をずらしてみると、異様に笑えてしまったりする。
カッコ良さ、と笑い、というのは意外と近い場所にあるような気がする。
エルヴィス・プレスリーのステイジングや歌舞伎での見栄の切り方や、発声法など、
一歩退いて見ると、カッコ良く見えていたものが急に笑いに変わってしまったりする。
ジャズでもそれは良くある。とくに、モダン・ジャズというのはシリアスであるが故の
笑いに繋がりやすい。しかめツラしてジャズを聴いているオジサンの顔が、面白いのと
同じように。起きたことが当人にとってこの上ない災難でも、他人には単なる話の種になってしまうように。
人間て残酷だ、なんてことをいいたいわけじゃなかった。
そう、この「PITHECANTHROPUS
ERECTUS 」もまさにモダン・ジャズという感じで、
ブロウして非常にアッパーなサックスが聴ける、で、ああ、ここまで行ったら行きすぎ、
シリアスなのが笑いに繋がっちゃうぞ!と思うようなところで、サウンドが端整にドカンと壊れるのだ。
その壊れ具合が絶妙。熱くなりながらも、どこか醒めているのだ。もうちょっと壊れて欲しい、という
気持ちがあるかと思えば、このくらいでもいい、という気持ちがあったりする。
ききてはホント、いつも、身勝手なものである。
竹村延和 / milano (1999 Warner
Music Japan)
★★★
音について繊細に意識した音楽をつくる音楽家がいて、
彼らの作った音楽は、ききての想像力をとても喚起する。
竹村延和もそんな音楽家のひとりで、彼の音楽には、
そんなききてのイマジネーションを膨らませるちからと
同時に、かわいらしい音のユーモアに溢れている。
「milano」もことばでは表現できない、抽象的であり、ゆえに具体的な
イメージとなってききての頭の中で映写されるストーリー。
ただ音の海に、ぼんやりとたゆたうこもできる。
この作品はファッション・ショーのために作られたのだというけれど、
ショーのためのBGMではなくて、音楽が単体で成立している。すばらしい。
JAMES BROWN / LIVE AT THE
THEATER APOLLO (1967 PolyGram)
★
ジェームズ・ブラウンの声の存在感はやはり唯一無ニのもので、
凡百のシンガーが束になってかかっても構わないのは確かだ。
が、しかし、人は必ずしも、圧倒的な存在感の声に惹かれるわけではない。
「LIVE AT THE APPOLO」は2枚出たライブアルバムを1枚のCDにしたものらしい。
ぼくはジェームズ・ブラウンのことを良く知らない。シャウトがちょっと元気すぎるかもしれない。
JB'Sのライブアルバムも聴いたことがある。そっちのほうが良かったかもしれない。
味は良いけど、胃にもたれる、油のきつい中華料理みたいな感じだなあ、なんとなくそう思った。
アルバム一枚聴きとおすのがちょっと辛いのだ。
でも、これがぐっとくる日もあるだろうなあ、と思わないでもない。