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クローン病 Q & A 集                                                            潰瘍性大腸炎Q&A集へ

慶應義塾大学病院炎症性腸疾患デイスカッショングループ勉強会において、これまでおこなわれた質疑応答のコーナー
でやりとりした内容をまとめたもです。


【内科治療】

Q:クローン病治療法のこれまでの歴史と、これから期待される療法にはどんなものがありますか。
Q:クローン病の内科的治療で現在一般的な治療法、新しく検討されている治療法、また、なかでも今後特に期待されるものがあれば教えてください。
Q:新しい治療法について教えていただけませんか。
A;クローン病が独立した疾患として認識された1930年代には、内科的な治療としては、消化のよい食物をとるぐらいで、手術療法が有効とされていました。1940年代にサラゾピリンや抗生物質が治療に用いられ、1950年代には副腎皮質ステロイド、1960年代には免疫抑制剤の投与が試みられました。1969年には中心静脈栄養や経腸栄養による治療が開始されました。現在、治療の基本は腸管の炎症を抑え、栄養状態を改善させる内科的治療で、栄養療法、薬物療法が病態により選択されます。薬としては、サラゾピリン、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤、メトロニダゾールなどが使用されています。近年開発されたサラゾピリンの有効成分である5-ASA製剤であるペンタサは、小腸病変にも有効です。また免疫抑制剤はステロイドの副作用がみられた症例や、減量が困難な例、瘻孔を形成した症例などに適応があります。
 基本的には成分栄養剤を中心とした栄養療法と、ステロイド、サラゾピリン、ペンタサおよび免疫抑制剤等の薬物療法があります。クローン病の病因として腸管内に存在する抗原とそれに対する生体側の異常な免疫反応が原因であることから、腸管内の抗原を取り除くという意味での栄養療法、局所での免疫反応や炎症を改善する意味での薬物療法は適切な治療と考えられています。
 サラゾピリンは大腸で腸内細菌により5−ASAとスルファピリジンに分解されます。効果を示すのは5−ASAであり、腸管の中で炎症を抑えると考えられています。その体内動態より小腸型クローン病には効果が期待できませんが、5−ASAの徐放剤であるメサラジンは小腸型クローン病にも効果が期待されています。サラゾピリン・メサラジンで症状が改善されない場合にステロイドが使われますが、栄養療法が第一選択となった現在では小腸病変に対して栄養療法と併用して使う場合が多いです。ステロイドの副作用として、顔のむくみ、骨粗鬆症、糖尿病、感染にかかりやすい、などがあります。
 免疫抑制剤はステロイドの副作用がみられた場合や投与が長期になり減量していく場合などに使われます。副作用として骨髄抑制が認められることがありますので定期的な血液検査が必要です。
 もう一つ、新しい治療法についてはクローン病の病変でTNFーαという物質が上昇し、これが炎症を持続させていることがわかってきており、TNFーαに対する抗体をクローン病患者に対して投与する臨床試験が行われています。
 また肝臓で代謝され、全身の副作用が少なく、局所的に高い抗炎症作用を持つステロイド剤(ブデソナイド)についても欧米では高い評価を受けていますが、本邦では正式な許可がまだおりていないため、特別に輸入して臨床試験という形で用いています。
 原因となる遺伝子の解明など病態が解明され、根治的な治療法が開発されるには、まだ時間がかかると思われます。しかし、局所の免疫反応・炎症反応の実態は徐々にわかってきており、これを抑えることを目的とした治療が開発されつつあります。例えば、クローン病の病変でTNF-αという物質 (サイトカインの1種) が上昇し、これが炎症を持続させていることが、わかってきました。このTNF-αに対する抗体の臨床治験が日本でも開始されており、欧米では既に認可された国もあります。


Q:ステロイドを長期に服用しても大丈夫なのでしょうか。 
A:ステロイドを長期服用した場合の副作用として、感染に対する抵抗力の低下、骨粗鬆症、糖尿病の悪化、胃潰瘍を作りやすくなる、などがいわれています。ステロイドの量が10mg以下の少量では副作用の程度はかなり弱くなりますが、どうしても長期間にわたりステロイドが減量できない場合には、代謝の早い局所ステロイド剤や免疫抑制剤といった他の治療法を試みる必要があると思います。


Q:クローン病の治療はいつまで続けなければなりませんか。また、良い状態が続き、薬物を中止するときの判断基準があれば教えてください。
A:通常緩解期になってからも2−3年は維持療法として治療を続けるのが原則です。しかし中止したとたん再発する例もあります。現在のところ明確な中止の基準はありませんが、自己判断で中止しないで必ず主治医の先生と相談して下さい。


Q:サラゾピリンの副作用について、特に長期間服用した場合について教えて下さい。
Q:サラゾピリンの副作用の一つである無精子症は、しばらく薬をやめれば元に戻るということですが、どのくらいの期間で元に戻るのか、あるいは薬を減量するだけではだめなのか教えてください。
A:比較的頻度の高い副作用として、1) 過敏症状(発熱、皮疹など)、2) 消化器症状(食欲不振、吐き気、肝機能障害など)が挙げられます。他に、頻度は高くありませんが、血液障害(白血球減少、貧血など)や、頭痛、めまい、男性不妊(可逆性の無精子症)などがあります。具体的には発疹4.1%、発熱2.4%、消化器症状1.5%といったところです。
副作用の発現までの期間はその8割程度が、服薬開始後1ヶ月以内に発生し、1割ほどが1年以降のものです。サラゾピリンの長期内服については、かなり安全性の高いことが実証されていますので、数年間問題なく内服されているような場合、可能性は低いものと考えられます。サラゾピリンで副作用が現れた場合には、服薬を中止するのが一般的です。
サラゾピリンがどうしても治療に必要なときには、少量から開始して、徐々に増量して慣らして行く、脱感作療法という方法があります。精子数が元に戻るまでの期間は、平均2〜3ヶ月と言われています。妊娠するまでは完全に服薬を中止し、その後再開するとよいと思います。


Q:サラゾピリン、ペンタサ、プレドニゾロンなどを妊娠中も飲み続けても妊娠、出産および子供に影響はないですか? 
また、実際に経験した人はいますか?
Q:炎症性腸疾患が妊娠や出産、胎児に与える影響を教えて下さい。
A:妊娠の炎症性腸疾患に及ぼす影響については、妊娠自体よりもむしろ妊娠成立時の疾患活動性に依存するといわれています。原則として妊娠は制限しませんが、緩解期に妊娠すれば経過はより良好です。妊娠3ヶ月まではできる限り薬物の服用は避け、栄養療法のみで加療することが望ましいと思います。サラゾピリンの妊娠経過の影響については、危険性がないことが報告されており、非妊娠時の治療と同様に安全に使用できます。また、サラゾピリンはほとんど母乳中に分泌されないため、乳児には安全に授乳を続けられます。ペンタサはほとんど母体血中に吸収されないことから、やはり安全と考えられています。プレドニゾロンも最近の研究では、妊娠中安全に使いうるという意見が主流です。また、母乳中にも分泌されますが、新生児は母乳から投与量の約1%を摂取するのみであり問題ないとされています。ただし、ステロイドの全身投与は絶対的に必要な場合に限定するのが望ましいと考えます。
当科でも実際に妊娠、出産、授乳を無事に行った人を大勢経験しています。妊娠を希望される方は早めに医師にご相談下さい。


Q:漢方薬の効果について
A:いくつかの漢方製剤が炎症性腸疾患に有効であったとする報告はあります。しかし、単独で投与した際の効果や、一般的な治療法との比較検討はなされておらず、確立した治療法といえないのが現状です。
なお、当院の漢方クリニックでも内科外来と共同で診療している患者さんはいますが、これまでのところ、漢方クリニックのみでの本疾患の治療経験はないようです。


Q:経腸成分栄養剤を服用するのに要する時間を短縮できないでしょうか?
A:経腸的高カロリー療法を施行するうえで、浸透圧性下痢をいかに予防するかが重要です。輸液ポンプを使用し、少量ずつしかも持続的に投与することにより、浸透圧性下痢を起こすことが少なくなります。腹痛や下痢などの症状を見ながら、注入速度をあげますが、注入速度は一時間あたり80〜100ml程度が限界と考えられています。夜間の睡眠中に注入できる量には限界があり、不足分は経口的に服用するなどの工夫が必要です。また、高速度の注入は嘔吐や誤飲の原因にもなるため、自己判断での調節は避け、必ず医師に相談して下さい。


【外科治療】

Q:現在、クローン病に対して行われている手術方法とその問題点について教えて下さい。
Q:クローン病の内科的治療と外科的治療との相互のの関係を教えて下さい。
A:クローン病は消化管全域をおかす疾患であるので、外科治療の目的は症状の原因となっている合併症の部分に有効な外科的処置を加え、その症状の改善をはかることにあります。長期経過例の解析では大部分の患者が何らかの外科的治療を受けています。わが国でも発症後累積手術率は5年後で30%、10年で70%と報告されています。
手術術式としては・切除+吻合、・バイパス術式、・狭窄形成術、等があります。患者の栄養状態により人工肛門造設も考え、最も適した術式をタイミングのよい時期に行うことにより生活の質の著しい向上につながると考えます。
 瘻孔についても、半数以上が十分な中心静脈栄養や成分栄養で閉鎖が可能です。かつてはクローン病変に合併する肛門病変の手術は余り行われていませんでしたが、患者さんのQOLを高めるために痔瘻の手術が行われるようになりました。また、手術の方法も以前は広範囲の腸切除が主流でしたが、現在は小範囲の切除が主で、腹腔鏡下手術も行われるようになりました。また、病変部をあえて切除せず、切開を加えて拡張する狭窄形成術も行われています。
クローン病の治療は、栄養療法、薬物療法を中心とする内科療法を行うのが原則です。本疾患の性質上、外科的切除に"根治"という概念がないからです。すなわち、本症に対する手術後の累積再発率は5年で30〜40%、10年で60〜70%前後と高率に再発が見られます。しかし、腸管の閉塞・高度の狭窄、腸管皮膚瘻や腸管膀胱瘻などの瘻孔、膿瘍などに対しては外科的治療を考慮せざるを得なく、いったんこれらの合併症が生じた場合はいたずらに内科療法を続けることなく、早期に外科治療を施行すべきと考えます。


Q:クローン病に対して小腸移植などの治療は行われているのでしょうか。
A:1964年に初めて小腸移植が行われて以来、34年経過しましたが、小腸移植はいまだ発達段階の治療で、拒絶反応とそれにひき続く感染症のコントロールが現在の大きな課題となっています。したがって、中心静脈栄養による合併症により生命がおびやかされている症例が現在の小腸移植の適応とされています。1985〜1995年の10年間に国際的に登録された症例の報告を見ると、小腸の生着率は、小腸の単独移植では1年生着率は65%、3年生着率は29%となっています。最も小腸移植症例の多いピッツバーグ大学では成人のクローン病の患者さんで長期の中心静脈栄養法の維持に困難をきたした8例が移植をうけたと報告されています。


【生活・食事】

Q:食事は何をとればよいのでしょうか?あまり気にしないでいると血便が出ます。
Q:コーヒーなどの刺激物はよくないといわれていますが、コーヒーのカフェインが悪いのですか?紅茶、緑茶、ウーロン茶も同じでしょうか?
A:クローン病の治療においては、完全静脈栄養や成分栄養療法等の栄養療法が活動期の緩解導入、さらには緩解維持効果を有していることが認められています。また、在宅成分栄養療法は緩解維持に役立ち、生活の質の点からも優れた治療法ですが、食事に移行するにつれて再燃が多くなります。緩解維持のためには、低脂肪、低残渣、低刺激を心がけます。潰瘍性大腸炎における栄養療法は、クローン病に準じますが、その位置づけは異なっています。すなわち、食餌療法そのものは大腸炎を治すprimary therapy とはなりえず、補助的療法として位置づけられています。
クローン病において避けるべき食品は、以下のものが挙げられます。
・高残渣の食品 生野菜、生果物、さつまいも、海草、きのこ、繊維の多い野菜、香りの強い野菜など。(ただし、強い狭窄のある方以外は、それほど神経質になる必要はありません)
・高脂肪の食品:植物油、バター、マーガリン、ハム、ベーコン、ソーセージなど。
・高刺激性の食品:コーヒー、からし、わさび、カレー粉、炭酸飲料、アルコールなど。


Q:症状が一番悪かったときから体重が10Kg増え、体力的には楽になったのですが、風邪をひきやすくなりました。生活上、どういったこと(運動、食事、生活状態など)に気をつけたらいいですか?
Q:現在ASACOL、イムラン、フォリアミンを服用していますが、風邪をひいてなかなか治りません。クローン病の治療薬によって一般の医院でもらう風邪薬の他の薬剤が効かなくなること、あるいは体質の変化(風邪をひきやすくなる等)があるのでしょうか?風邪をひいた場合はどうすればよいのでしょうか?
A:ステロイドや免疫抑制剤の服用により外来抗原に対する免疫反応の低下を来たし、感染にかかりやすくなることがあり、注意が必要です。発熱などの症状の他、採血データでの白血球数、CRPなど外来で定期的に経過観察するとともに、手洗いやうがいなどの予防行動も大切です。風邪薬なども自己判断で服用することなく、一度、医師に相談してから服用するようにしてください。
症状および腸管の炎症が落ちついているときには特に厳しい運動や生活の制限はありませんが、翌日に疲労を残さない程度が望ましく、十分な睡眠や規則正しい生活を心がける必要があります。
A:日常生活の注意点としては、規則的な生活をすること、ストレスを貯めないこと、疲れを翌日に持ち越さないこと、適切な食生活をすること、が大事です。病期や病気の活動性にも依りますが、病気をうまくコントロールして、社会生活を営まれている方は大勢います。そのためには、この病気のことをご本人がよく理解していることが必要です。


Q:クローン病に非ステロイド性解熱鎮痛剤(NSAIDs)を使うと症状が悪化するというのは本当なのでしょうか?
A:NSAIDsの内服により炎症性腸疾患が増悪したのではないかとする報告がありますが、その因果関係は現在のところ不明です。関節症状に対してNSAIDsはよく使用していますが、我々の施設ではいまのところ増悪した経験はなく、少なくとも感冒時における短期間の使用であれば問題ないと思われます。


Q:成分栄養剤以外に取ることのできる食事の質と量について教えて下さい。特に何を食べても大丈夫か、そして量の限度があれば知りたいです。
A:クローン病の食事は、低脂肪食、低残渣食、充分なカロリーに留意することが重要です。また、症状に応じて、成分栄養と食事の割合を調節していくことが基本となります。
具体的な献立例が、当院で作製した「クローン病の正しい知識と理解」というパンフレットに示されていますので、参考にするとよいと思います。


Q:クローン病の緩解期における食事において、脂肪や繊維はどの程度制限すればよいのでしょうか?また、絶対に食べていけないものはありますか。
A:緩解期においても、再燃予防の意味で、低脂肪食、繊維分の少ない食事に心がけることが必要ですが、増悪している時に比べ、制限をゆるめることができます。
個々の患者さんにおいて、かなり消化吸収、機能が異なりますので、絶対に食べてはいけないものは、基本的にはありませんが、自分にとって食べると調子悪くなる食品ソース類を理解し、避ける努力をすることが大切です。


Q:仕事のつきあい等でどうしても宴会にでなくてはいけないことがあります。飲酒について目安があれば教えていただきたいのですが。
A:どのくらいまでなら大丈夫というデータはありません。実際には飲み始めれば一杯のつもりが多くなってしまうことがあります。そのため病状が悪くなる可能性もあり、現時点ではアルコールはだめですとしか言いようがありません。

                            
Q:魚油を食べるとよいききました本当でしょうか。
A:青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)に抗炎症、抗免疫作用があることが推測されており、現在研究が進められています。もともとエスキモー人に慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎などの自己免疫が関わった慢性の炎症性疾患が欧米人に比べて少ないことから、彼らの食事摂取の多い海産物に豊富に含まれるωー3系多価不飽和脂肪酸が注目されました。EPA、DHAはその代表で、腸の炎症を悪化させる因子の1つであるエイコサノイドという物質の産生を抑制するといわれ、たら、ぶり、いわし、まぐろ、ぶり、あじに多く含まれます。潰瘍性大腸炎、クローン病に効果があったという報告もいくつかありますが、個人の摂取量、病態、反応性はそれぞれ異なると思われ有効性はいまだ検討段階であり、一概にはいえません。魚油はEPA、DHAを豊富に含みますが、過剰摂取はかえって病状を悪化させることもあり、魚臭もあるため、製剤にこだわる必要はありません。


Q:クローン病と診断される前に食べていて大丈夫だったものも、診断後は食べてはダメなのでしょうか。
A:そのようなことはありません。基本的な原則を理解した上で、自分にあった食品を理解していくことが必要です。診断後、改めて自分にとって食べてよい食品、食べないほうがよい食品を認識することが必要です。


Q:退院後はじめてクローン病によると思われる下痢を経験しました。急に水のような便がでてびっくりしました。はじめにお粥にし、次にいきなりご飯を食べたため失敗し、エレンタールにしましたが、エレンタールだけにするとかえって下痢が続くようです。このような場合、クローン病食がよいと思いますが、何をどの程度、1日に何回食べればよいのでしょうか?
A:症状が増悪した場合、前の段階の食事にもどすことが基本ですが、落ちついてきたら症状をみながら、食事の制限を少しずつゆるめていく方針でよいと思います。エレンタールだ けでかえって下痢が続いているようなので、徐々に食事を少しずつ開始してみてはいか がでしょうか。具体的な献立例が、クローン病の正しい知識と理解というパンフレット の P39 からP45 に示されていますので、参考にするとよいと思います。


Q:同じクローン病の患者の中でも比較的元気に生活している人の日常生活(精神面も含めて)を教えて下さい。
A:緩解している患者さんは、精神面も含め、ほぼ通常の日常生活を送ることが可能です。
ただ、再燃を予防するために外来通院していただき、食事療法、薬物療法などによる加療が必要になります。


Q:クローン病と運動について教えて下さい。
A:基本的には特別な制限はありません。しかし、ステロイド大量内服中や、運動が疲労の原因であったり、便の回数が増えるようなときは控えめにして下さい。


Q:クローン病と就業について、どのような点に注意する必要がありますか。
A:仕事の内容に関しては、制限することはありません。ただし、過労や過度のストレスで増悪する可能性があることや、増悪期には長期入院が必要となることなど、ある程度まわりの理解は必要であると思います。


Q:クローン病患者の結婚について、留意する点など教えて下さい。
A:基本的な結婚生活に関しては、健康人と全く同じと考えてよいと思います。問題となるのは妊娠や、子供への遺伝の問題でしょう。妊娠については、緩解期に妊娠すれば正常産が多く、流産率・先天奇形の発生率は健康人と変わりがないとする報告が多いです。また、男性の場合、SASPの服用により精子の数が減少し、妊娠しにくくなる可能性がありますが、SASP(サラゾピリン)の中止により回復します。


Q:気分が晴れないときが続くと症状が悪化するようです。そのような傾向は一般的にありますか? また、落ち込みやすい人が発症しやすいといったことはありますか?
A:消化管機能は、自律神経と消化管ホルモンにより調節されていて、中枢神経系の影響を強く受けています。その中でも大腸は、ストレスによって運動が亢進するといわれています。また、情動によっても腸は影響を受けます。それらは、不安・緊張で下痢が、抑うつ・恐怖で便秘が起こるといった具合にです。それ以外にも、ストレスによって免疫能にも影響が及ぶといわれています。このように消化管は気分によって影響されやすい臓器ですが、これらは、健康な人にも起こり得ることで、クローン病に対する心理学的因子については、現段階では統一した見解が得られていない状況です。よって、落ち込みやすい人が発症しやすいということは現段階では、確立されておりません。

【合併症】

Q:クローン病の合併症にどんなものがありますか。
A:クローン病で合併する消化管外の病気としては、関節炎・強直性脊椎炎・虹彩炎・結節性紅斑などがあります。


Q:合併症は腸の状態が良くなればなおるのでしょうか。
A:クローン病の活動性を評価するものの一つにIOIBDスコアというものがあります。
これはクローン病でよく見られる10個の臨床症状で構成されていますが、このうちのひとつに合併症の有無が含まれています。このことからもわかるように合併症はクローン病の病勢を反映するといえます。 


Q:小腸に狭窄が5〜6カ所あります。レントゲンでみるとかなり狭くなってきているとのことで心配です。今後、どうなると考えられるのでしょうか?
A:腸閉塞症状はクローン病では高頻度に認められます。クローン病の腸管狭窄の原因には2種類あり、1つは炎症が著明な場合、もう1つは腸管病変が治る過程でおこる線維性瘢痕に伴う場合です。腸管の炎症が激しくなって狭窄を来している場合は、入院下の内科的治療(絶食下で点滴治療など)が必要です。この場合は、治療で腸管の炎症が治まるにつれて狭窄は改善してきます。一方、狭窄の原因が線維性瘢痕による場合は、これは、クローン病の長期経過に伴い、つまりクローン病の再燃を繰り返すことで出現するものなのですが、この場合の狭窄は殆どが非可逆性です。ですので、狭窄の程度にもよりますが、腸の内容物の通過障害によって腸閉塞を繰り返す場合は、外科的な治療を考慮しなければなりません。尚、狭窄に対する手術も、最近は、小範囲切除として、狭窄形成術という術法が施行されるようになり、術後は通過障害が改善され、経口の食事摂取なども可能となります。尚、完成した非可逆的な線維性狭窄は、内科的治療は非常に困難ですが、現在その発生を予防しようという実験が試みられている段階です。


【病態・その他】


Q:遺伝するのでしょうか。
Q:クローン病は子供に遺伝することがあるのでしょうか?
A:クローン病は約1.5%に家族内発症を認め、本邦では欧米に比べて家族内発症が多いといわれています。クローン病の家族内発症例を検討してみますと、同一家系内ではクローン病の病気の部位や病気のタイプが同じことが多いといわれています。また、家族内で発症したクローン病を遺伝子染色体を用いて検査をしてみますと、染色体の同じ部分に異常が見られるということが報告されています。ですので、病気の発症の一因子として、遺伝というものは、あげられます。しかし、遺伝性のものだけでは発症しないようで、その遺伝にいくつかの環境因子などの他の因子が関与して発症するのではないかと考えられ
ています。
A:遺伝的な要素がないわけではありません。しかし、クローン病は人種や地域的に発症する頻度が異なり、家庭内発症も認められますが、単一の遺伝子によって遺伝する病気ではなく、環境因子などが複雑に絡み合って発症するとされ、単純なメンデルの法則による遺伝は認められません。遺伝因子以外にも様々な環境因子が複雑に絡み合って病気を形成しており,遺伝だけで発症が決まるわけではなく、あまり心配する必要はないと思います。


Q:潰瘍性大腸炎からクローン病に移行することはあるのでしょうか。
A:おそらく、移行することは無いと思います。潰瘍性大腸炎とクローン病は一時期だけをみると診断が困難な場合があり、潰瘍性大腸炎と診断されたものが、実はクローン病であったり、逆のケースもあり、当院でも経験しています。また、少数ではありますが両疾患の中間的な症例が存在することも事実です。


Q:クローン病の患者さんは癌になりにくいということを聞いたのですが?。他にかかりにくい病気など、ありますでしょうか。
A:今のところクローン病の方が癌になりやすいという、はっきりした報告はありません。また、なりにくいとも言われていません。癌以外にもクローン病だからこの病気になりにくいといったものはないでしょう。なお、免疫抑制剤が長期投与された場合に、癌の発生が増加する可能性を指摘する人もいますが、統計的なデータからは現在のところ増加したとする証拠はありません。

Q:クローン病患者に共通する免疫学的、遺伝学的および一般生活上の何らかの因子(既往歴、食の好み、性格等)があれば教えて下さい。
A:クローン病の原因は不明ですが、原因としては遺伝的素因、ウィルスや細菌などの感染説、食餌によるもの、血流障害、免疫学的異常などが考えられています。免疫学的異常としては、病変部での細胞(T細胞というものです)の活性化が注目されています。また遺伝的因子としては、白血球をタイプ別に分けてみると(HLAというものですが)、そのタイプの中のうち、あるタイプを持っている人がクローン病には多いといわれています。
ただし、それが原因かどうかは現段階では定かではありません。また食事によるものとしては、動物性蛋白や脂肪量の摂取が多い人には比較的多くクローン病が起こるといわれています。よって、食物の欧米化でこの病気が増加していると考えられています。性格については、上記のごとく、クローン病発症との関連ははっきりとは提唱されていません。


Q:一度硬化した腸管壁を再びもとの状態にもどすことは可能でしょうか。
A:一時的に腸の粘膜が炎症性の浮腫を起こし狭窄をきたした場合には、治療により炎症がひけば狭窄がとれる場合がありますが、炎症が持続して腸管壁が線維性に硬化して狭窄をきたした場合には、薬剤でもとの状態に戻すことは現在では困難です。大腸など、内視鏡が届く範囲の病変に対しては内視鏡を用いて、バルーンで拡張できる場合があります。
高度の腹部膨満感や嘔吐など、腸の狭窄による症状が強い場合には、外科的に腸の狭窄部の切除したり、狭窄部に切開を加えて拡張するような手術による治療が必要となります。


Q:クローン病は加齢とともにどのように変化していきますか。
A:クローン病の炎症の活動性は、発症からの経過期間が長くなるにしたがって低下する傾向があります。10年以上の長期観察例では約4割の症例が経過良好群に入っています。
しかし、累積手術率(年々の手術率を総じた割合)は、10年後に40%、15年後50%と発症後増加を示しています。手術理由で多いのは腸管の狭窄あるいは腸閉塞です。診断後15年での生存率は96.9%と良好であり、治療法の改善により更なる向上が期待されます。


Q:小腸切除術を繰り返し、小腸が短くなっていると、栄養障害がおきますか。現在経腸栄養剤で食事をとっていますが、普通の食事をとることはできますか。
A:小腸が広範に切除されると、栄養素を吸収できる面積が減り、消化吸収障害が起こります。小腸を切除した部位および範囲により、消化吸収の能力、栄養状態は異なります。
胆汁酸やビタミンB12の吸収が行われる回腸末端が切除されると、その切除範囲に応じて下痢や脂肪便をきたし、ビタミンB12欠乏状態となります。また、脂肪の消化が不十分となり、カルシウムと結合して、腸管内で溶けたまま大腸で吸収をうけ、、腎結石ができることがあります。空腸からは様々な消化管ホルモンが産生されるため、広範囲に切除されると、消化障害をもたらします。残っている腸管が短い場合、腸管の安静を保つためには経腸栄養剤は有効な治療です。クローン病自体の活動性や、再発を繰り返した頻度、残っている小腸の機能などにより、経腸栄養剤のみで経過を見た方が良いか、低脂肪低残渣食を併用できるかは、個々の症例によって異なります。


Q:おなかの痛みがないのに便に血液が付着するのはなぜですか。
A:クローン病の状態が腹痛が起こるほど、悪くなくても腸の粘膜は傷つきやすくなっており、血液が付着することがあります。また、クローン病では痔核などの肛門病変の合併が比較的多く、痔核からの出血で便に血液が付着することもあります。


Q:病状に変化がなくても内視鏡検査は必要なのでしょうか?
A:症状や血液検査で経過を追うのが重要なのと同様に、病変の状態を把握するために、緩解期でも1年に1度程度の内視鏡検査は可能な限り必要と思われます。また、小腸病変の評価には小腸造影が必要です。


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