|
|
2, |
姉さんが飛ぶように走っていった。
姉さん、どうしたのと僕は聞いた。
デートにおくれるの、と姉さんが答えた。
姉さんの目は剃刀のように細くなっていた。険しくなっていた。
僕は姉さんを止めようとした。
実はさっき「一時間おくれる」という伝言を、姉さんのフィアンセから受け取っていた。僕はそれをいい忘れていたのだ。
冷や汗が滝のように流れ出した。
「姉さん。」
僕はそういったきり、棒のように立ちつくした。
バタン、
まるで、鉄の扉のように冷たくドアが閉まり、ばたばたというニワトリの羽音のような、あわただしい姉さんの足音が遠ざかっていく。
ああ、姉さんが帰ってきた時、小鳥のように逃げ回る僕の姿が目に浮かんだ。
コワイ。
|