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●「長い文章を読む」

1,
 最初の勉強は、「本に親しみ、新しい世界を求める」です。本、読んでいるかな? 君の本棚にはどんな本があるのかな。「ゲームの攻略本」ばかり? うーん、それも本には違いないですね。「攻略本」ばかり読んでいて、でも、漢字はおかげでほとんど読めるようになった子もいます。好きなことだから、自然に覚えちゃうのね。
でも、「攻略本」には「人の気持ち」って書いてないよね。「悲しかったり」「寂しかったり」「うれしかったり」、そういう人の気持ちが書いてない。ゲームのキャラクターの性格は書いてあっても、それはおおまかなもので、実際の人間はもう少し複雑なものです。
 そういった「複雑な人の気持ち」がわからないと、なかなか他人とコミュニケーションできません。言葉が分かっても、その言葉の裏にある気持ちがくみ取れないと、ちょっと困るのよね。
 今月読む物語「南にかえる」は、ブラジルからきた青年・セルジオと少年、君たちと同じ世代の真一くんがでてきます。教科書を開いてみましょう。「南にかえる」は教科書の4ページです。

 5ページにセルジオと真一のイラストがでています。この二人が主人公です。物語が進むにつれ、この二人の感情がいろいろにうごいていきますから、それに注意してまず朗読を聞いてください。今月は「人の気持ちを文章から読み取る」練習です。   

 外国ではいろいろな国の人と知り合う機会が多いと思うのね。むしろそれが普通。でも、日本では、昔より多少多くなったけれど、それでもやっっぱり、外国から来た人は珍しがられてしまいます。まだ知り合う機会が少ないから、とってもそういうことになれていないのね。
で、この物語は真一君の語りでつづられているわけだけど、君にとっては、セルジオの気持ちの方がよく理解できたんじゃないかな、と思います。だって、故郷を離れて外国で暮らしているのは君たち自身だものね。知らない国に来たときの戸惑いは、セルジオ以上のものがあったかもしれません。
まあ、そういう意味で言えば、日本に暮らしている子より、あなた達の方がずっと感じるものがあったと思います。
 逆に言えば、真一君の気持ちの方が受け取りにくかったかもしれないわね。
じゃ、ここで真一君の気持ちの動きを追って、「あらすじ」をつかんでみましょう。
 「あらすじ」は一体どうやってつかむのか。これはちょっと説明できないんだなあ。要は長い文章だから、大事に思う言葉を拾っていって、それを整理すればいいんだけど・・・。そういわれてもねえ。じゃ、この文章を使って、実際に私がやってみましょう。

 教科書の4ページに戻りましょう。文章の最初から、私が大事に思う言葉を抜き出していきます。そうだなあ、君は抜き出された言葉に傍線でも引いてみようか。そうしたら分かりやすいからね。
じゃ、大事な文章の拾い読みです。いきますよ。
 
 セルジオがやってきたのは、夏休みも間近のことだった。僕はセルジオと目があったりすると、どういう風にしていいか、困ってしまった。
 セルジオは「ちょっとかしてみて」というと、器用にボールを操ってみせてくれた。ぼくは、初めてセルジオに話しかけた。
 セルジオの日本語にぼくはもっと驚いてしまった。
 夏休みに入って、ぼくは、ドリブルやパスを教えて貰った。
 セルジオはいつもつきあってくれた。
 ぼくはセルジオをとても好きになっていた。
 ぼくはセルジオとよく話をした。
「おじいさんは、日本からブラジルに行ったんだよ。アキオっていうのは、10月生まれのぼくに、おじいさんが付けてくれた名前なんだ。おじいさんはきっと、ぼくの名前の中に、日本の美しい秋を見ていたんだと思う。」
 心の中には、複雑な考えとたくさんの言葉とがうごめいていた。
 ぼくはそれをうまく言い表すことが出来なかった。
 セルジオは、そんなぼくを柔らかな瞳で見て「とっても元気。とっても幸せ」と答えた。
 セルジオは時々、小声で歌を口ずさむ。
 「南にかえる」っていう歌なんだ。「望みを持って、不安を持って、南に帰る」。そうなんだ。セルジオはいつだって、バイーアをなつかしんでいたんだよね。だから、いつかはほんとに帰っちゃうんだね。
 二学期が始まって間もないある土曜日の夕方、セルジオがぼくの家にやってきた。
 「セルジオさんがブラジルにかえることになったのよ」
 急に泣きそうになったぼくを見ていたセルジオは、困ったような顔をして、何も言わなかった。
 母さんははしゃいで、しゃべり続けている。ぼくはもう聞いていなかった。
 「ブエアルスールだね」ぼうはセルジオに言った。

 セルジオが手紙をくれた。
  「おじいさんは、今もとても元気です。ぼくはおじいさんに、とても大きなものを感じます。一度、会いに来てください」
 世界の中で、一番遠いところに帰って、少しずつ遠のいていくように感じられていたセルジオが、一挙に身近に感じられた。

  ということでした。今度は「あらすじ」、わかったでしょ。
こういう文章の拾い方は、正確に言うと長い文章を短くしているだけなんだけど、でも、こうやっておくと「物語」の内容はずっとつかみやすくなります。ただし、今私が抜き出した言葉が「一番正しい」というわけじゃありません。読んだ人が感じたまま抜き出せばいいのね。
長い文章に出会って、内容がつかみにくかったら、とばしとばし読んでみると、意外に分かったりすることもあります。
 「大事な言葉はどれか」なんて、難しいことは考えずに、ただ単純に、2行ぐらいづつとばして読むのも、いいかもしれません。本当はそんな方法を使うと、学校の先生に怒られちゃうかもしれない。バレナイヨウニ、そっとね。奥の手だから。

 あらすじがつかめたら、今度は朗読の練習です。
教科書には「伝えたいことがあったら、そこを強調しましょう」なんて書いてありますけど、そこで言っている「強調」は、単に「強く言う」という意味だけではありません。「ゆっくり」読むのも「強調」ということね。
 ほかにもいっぱい「強調」のしかたはあります。だけど、最初に言ったように、要は気持ちの問題なのよ。主人公の気持ちが読みとれれば、自然に朗読は上手になります。下手な朗読は、読む人が内容をよく分かっていないときに起こります。
 だから、この時主人公はどういう気持ちだったんだろう。こういうことを言っているけど、本当はどういう気持ちなんだろう。そうやって常に想像力を働かせながら読んで下さい。
 で、こういう文章を読んで、日本の誰か、友達でもいい、親戚でもいい、誰かに君が手紙を書きたくなったとしたら、それで十分。あなたはしっかりこの文章に込められた「気持ち」を理解していると私は思います。


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