| 1, |
ある国に「反対言葉大王」という王様がおりました。なんでも「右」と言われたら「左」、「上」と言われたら「下」と答えるので、そういう名前が付いたのでした。
ところが、その大王は最近少々年をとりすぎて、思うように「反対言葉」が出なくなりました。もちろんそんなことはみんなに内緒です。
ある時、大王の孫が久しぶりに遊びに来ました。実は大王はこの孫に今はあいたくありませんでしした。どうしてって、孫は今小学2年生、学校で「反対言葉」を習っている最中だ・・・それを、大王も知っていたからです。
「おじいちゃん、元気?」
ある日、とうとう大王は孫にみつけられてマゴマゴ。
「ああ、私は大丈夫だ。しかし、最近は耳が遠くなって、おまえの声もよく聞こえないようになった」
それはもちろん大王の嘘でした。孫によけいな質問をされたくなかったのです。 |
|
 |
|
|
2, |
「そうかあ、それは大変だね。ねえ、おじいちゃん、『暗い』の反対の言葉は『明るい』だよねえ」
ああ、大王が恐れていたことが始まってしまったのです。それでも大王はできるだけ平気なフリをしました。
「ああ、そうだな、『暗い』の反対は『明るい』だな」
「『前』の反対は『後ろ』だよねえ」
「ああ、その通り。孫や、せっかく私の家に遊びに来たんだ。勉強のことは忘れたらどうだ」
「うん、でも聞きたいことがいっぱいあるんだ。『縦』の反対は『横』。ねえ、そうだよねえ」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、『大雪』の反対はなんなの?」
「なに!『大雪』の反対?。そりゃおまえ・・えーー」
大王は答えを探して目を白黒させました。 |
| 3、 |
孫が言いました。「あ、言わないで。僕わかってるんだ、『大雪』の反対は『小雪』というんだ。『大雨』の反対は『小雨』だよね」
「う・うーん、その通り!」
大王はほっとしました。恥をかかないですんだ、誰がそばで聞き耳を立てているか、わからないからです。
「でもね、『海』の反対はなんだろう」
「『海』の反対?、エーエー、そりゃおまえ『かかか・・かわ』だろう」
大王は額に汗をかき始めました。
「そうだよねえ、僕もそう思ったんだ、だけど本当は『海』の反対は『陸』なんだっってさ」
「うむ、そうだ、そのとおり、よく『陸』だと思いついた。さすがは私の孫だ」
大王は必死にごまかしています。 |
|
|
|
 |
4 |
孫が続けて言いました。
「『増える』の反対は『減る』、『重い』の反対は『軽い』、『あがる』の反対は『下がる』。『あがる』の反対には『下がる』だけじゃなくて『落ちる』もあるんだよ。ねえ、おじいちゃん」
大王はなんだかお尻がむずむずしてきました。居心地の悪さったらないのです。
「『高い』の反対は二つあるんだよ。『低い』もあれば、『安い』もあるんだ。ねえ、それでいいんだよね」
「ああ、そうじゃ、反対言葉は何も一つと決まっているわけじゃあない。そこが面白いところだな」
「あれ、おじいちゃん、汗かいているよ、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ。ちょっと耳が遠くなってはいるが大丈夫だ」
「でもね、次が問題なんだ。『優しい』の反対はなんだろう」 |
|
大王は必死に考えました。『優しい』の反対はなんだろう。どうしても言葉が浮かんできません。
そのとき、また孫が言いました。
「お母さんが『やさしい』なんて言う場合は、反対言葉は『こわい』。そう思ったんだ」
「うんうん、そうだ。『優しい』の反対は『こわい』」
「じゃあないんだよねえ」
「そうだ、そうじゃあない。私は答えを知っているが・・・おまえのために黙っておくぞ」
「『優しい』の反対は正しくは『厳しい』だ!。ねえ、おじいちゃん」
「そう!そうだ!。『厳しい』だ」
「それに問題が『易しい』なんかのときは、反対は『難しい』だ。ね、そうだよねえ」
孫はそういいながら去っていきました。大王はほっとしました。
孫は大王が見えなくなるところまで行くと、こうつぶやきました。
「やっぱりみんなの言うとおりだ。おじいちゃん、なんだか辛そうだった。だけど、大丈夫だよね、反対言葉はみんな僕が答えちゃったからね」
みんなが『やさしく』大王を見守っている国のお話でした。 |
|
|