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ある月夜の晩に、親戚一同が集まりました。「つきお」と「すけぞう」、それに「しほ」と「ちさ」の4人です。
「つきお」と「すけぞう」は大変仲が悪いのです。「しほ」と「ちさ」も仲が悪いのでした。
「すけぞう」が言いました。「さあ、つきお。俺の杯を受け取れ」
「それは受け取れない」と、「つきお」がいいました。「すけぞう、おまえが差し出した杯は『す』に濁点をうつ。俺は受け取れない」
「ふん、たかが『つ』と『す』の違いではないか。『融通』の利かぬやつだ」。
「つきお」が立ち上がりました。「また『融通』などと『す』に濁点の『ず』を使ったな。どうしておれのいやがる『仮名遣い』をするんだ」
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「すけぞう」がいいました。「何を言う。きさまこそ今、『仮名遣い』などと『つ』に濁点をつけたな。生意気な」
「すけぞう」が「つきお」をこづきました。「あ、こづいたな。『こづく』は『つ』に濁点の俺の領分だぞ」
「しほ」が二人の仲に割って入りました。「まあまあ、喧嘩せずに、料理にまず舌鼓を打ちなさい」
「なに、『舌鼓』だと」、すけぞうがいいました。「それは聞き捨てならない。『舌鼓』は『つ』に濁点だ」
「つきお」が飛びかかりました。「すけぞう、今おまえ『聞き捨て』と言ったな?。また『す』に濁点を使ったな」
「ちさ」が声を上げました。「あらたいへん、すけぞうさん、鼻血がでてる」
「しほ」が「ちさ」をにらみました。「『鼻血』ですって、そりゃあなた、『ち』に濁点。、まあしゃくに障る。いちじるしい侮辱だわ」
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「しほ」が言いかえします。「あなたこそ、くやしい。『縮む』は『ち』に濁点だけど、『いちじるしい』は『し』に濁点。庭のじんちょうげが笑ってるわ」
「ちさ」が「しほ」に飛びかかります。「ジンチョウゲはよくみんな間違えて『ち』に濁点を打つけど、本当は『し』に濁点。それを知っていて使ったのね。私の底力をみせてやるう」
「すけぞう」と「つきお」が顔を見合わせました。「さすがは『ちさ』だ。あんな時でもきちんと『底力』と『ち』に濁点を使っている」
二人は感心しながら、それでも「おい、せっかくの料理をひっくり返されては困る。少しずつ、かたづけよう」
すけぞうがそういうと、つきおが答えました。「おお、すけぞう。『すこしずつ』は『す』に濁点だが、『かたづける』は『つ』に濁点。双方をうまく使い分けたな」
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「つきお」が「すけぞう」の手を取りました。「さしずめ、『ちからずく』はよくないということだ。みな、親戚ではないか」
「おお、『さしずめ』は『す』に濁点、『ちからずく』も『す』に濁点、おまえは俺にエールを送っているのだな」と、すけぞう。
「まあ、そういうことだな」と「つきお」。
「その言葉に俺はずいぶん『元気づ』けられたぞ」
「おお、その言葉は『つ』に濁点」
二人の『絆』は強くなり、月夜の下で狸が『腹鼓』を打ちました。
『絆』の『ず』は『す』に濁点、『腹鼓』は『つ』に濁点です。
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