| 1, | 二人の兄弟がおりました。兄はまじめな男でした。弟もまじめでしたが、すこし世をすねたところがありました。 ある時、弟は恋に破れ、山に引きこもってしまいました。兄は弟の行方を捜しましたが、どこへ行ったのか、どう過ごしているのかわかりませんでした。 それから8年の歳月が経ちました。兄はとうとう弟の行方を突き止めることが出来ました。 これからお話しする会話は8年ぶりに弟と兄が再会したときの会話です。 |
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| 2, | 弟「兄さん、久しぶりだね」 兄「弟、ずいぶんおまえを私は捜したのだ。いったいどんな生活を送っていたのだ」 弟「夏は暑さに耐え、冬は寒さに耐え、困窮欠乏に耐え、屈辱にも耐え、苦痛にも耐え、家の湿気にも耐えてきた。 風圧に耐える家も、振動に耐える家もなく、耐え難い苦痛に耐え、ただひたすら悪政に耐える人を見てきたのだ。兄さん、私の勝手を許してくれ」 兄「おまえが家を出たとき、私は怒りに堪えなかった。どうしてわたしに相談しなかったのか、遺憾に堪えない。 一読に堪える別れの文もなく、まったく驚嘆に堪えなかった。 悲しみに堪えきれず、母は見るに耐えない有様、父は任に堪えきれず辞職し、近所の人は聞くに堪えないような噂を流し、そういった批判に堪えながら、我が身の負担に堪え、その姿を見て悲しみに堪えきれず去っていった人もいたのだ」 |
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| 3、 | 弟「そうか、苦労に堪えてくれたんだね。兄さん」 兄「このままでは家が絶える。息も絶える。家系が絶える。客足も絶え、人の訪れも絶えてなく、人通りも絶え、笑い声も絶えた家となり、望みもこれでは絶え果ててしまう。 そこで私は、消息の絶えたおまえを捜す旅に出たのだ。人跡が絶えた山に入り、絶えて久しくあっていないおまえを捜し、ある時は絶え間なく降る雨に行く手を絶たれ、食も断ち、思いを断ち、退路を断ち、酒を断ち、筆を断って、通信を断ち、補給を断ち、何もかも断って訪ねてみれば、ああ、弟よ。見るに堪えないその姿に、いまこうして巡り会ったのだ」 |
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| 4 | 弟は兄の手を取り、兄は弟の手を取り、絶え入るような声で互いに忍び泣いたのでありました。 |