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僕がシアトルにいる1999年9月にWTO(世界貿易機構)の会議がシアトルで行われました。ダウンタウンのコンベションホールを利用して、約1週間の日程だったのですが、世界中から「先進国及び大資本主導の経済支配に反対する」活動家がシアトルに集結し抗議行動が行われましたが、それに便乗して、騒動を起こすことだけを目的としたグループも一緒にシアトル入りし、会議そのものへの抗議のみならず、大資本のシンボルであるマクドナルドやGAP、スターバックス等の店舗がこれら過激活動グループに襲撃され、僕の学校があったブロードウェイでも派手な警察との攻防戦が行われました。このため、ダウンタウンの一帯が立ち入り禁止になり、バスがすべてダウンタウンを回避して、僕が学校から家に帰る方向に集結してしまったために、通常20分の行程が40分以上かかかりました。一度、あまりにもダウンタウンが気になったので坂をダウンタウン方向に下りてゆくと、強烈な刺激臭がして鼻水が出てきたので、慌てて引き返しました。催涙ガスとペッパースプレーの匂いですね。家に帰って「俺、ペッパースプレーの匂いかいできたぜ」と言うと、遊びに来ていたPの友達・美人のSにケッ!という顔されました。
テレビでは連日「今日の攻防」みたいな報道が繰り返されて、レポーターまでが催涙ガスとペッパー・スプレーで警官に追われるということが放映されていました。WTO会議終了後、各テレビ局では総集編を放送し、徐々に凶暴化したプロテスタと警察の攻防をあますところなく記録しました。
僕のルームメイトの「環境保護派」ことP(女性)もダウンタウンの攻防戦に参加し、ゴム弾を太モモに3発喰らって大アザ作って帰ってきました。「私体が大きいから的になっちゃうのよ!」と怒ってましたが、危ないところにいかなきゃいいのにねぇ…。反面、男性ルームメイト2人はまったく無関心。一人はインターネットでニュースを見たのと、仕事帰りにダウンタウンを経由しようとして果たせず、やむなく1stアベニューからブロードウェイまで10ブロック以上歩いて、疲れ果てて帰ってきたので騒ぎの様相は知ってましたが、もう一人はテレビも見ないしコンピュータもけして触らないので、「WTOってなんだ?」と僕に聞いてきた始末。
騒ぎが収まった2週間後、ダウンタウンに出た僕は、Tシャツ屋さんで「俺はWTO生き残り」というTシャツを見つけて即購入しました。なんたって、ペッパースプレーの匂いかいだ男だぜぃ。

こういう大騒ぎも面白かったのですが、僕のルームメイトも隣人たちも毎日大騒ぎでした。
雨の多いシアトルでは、土足で上がる家の中が泥だらけになります。定期的に僕が掃除してましたが、白いタイルのキッチンは毎日モップがけしないと、乾いてから土ぼこりが舞い上がって大変なことになります。僕が掃除をするそばから泥だらけの靴でキッチンを歩き回って汚すP、その汚れた床を裸足で歩く風呂上がりのB、そのあとからモップ持って掃除し続ける僕…。
隣の家の家族一同(祖母・母・子)は、近所づきあいを一切しない主義のようで、僕が「ハイ!」と言っても祖母も母も僕を見もしないし、6才くらいの女の子は、僕を見ると「マミー日本人がいるぅ!」と叫ぶんですよね。だから僕は「君可愛いけど人種差別主義者なんだねぇ」と日本語で言い返してました。
その向こうの家は我が家同様シェアハウスで、男女4人が住んでました。そのうち一人の女性が毎週我が家に遊びにきて、僕とも仲良くなりました。ある週末、僕が自転車でワシントン湖に行った帰りに、洗車していた彼女に「車洗ってこれからデートか?」と聞くと、「私の彼の名前を漢字で書いて!」と言うので、ワードプロセッサで「譲司」と打ってあげました。次の週末、彼女が僕の家に友達二人とやってきて、「この間はありがと。私の友達の彼の名前も漢字で書いてあげてよ」と言うので、「なんて名前?」と聞くと、一人はマイケル、もう一人はグレッグ(グレゴリーの略)。マイケルは「舞蹴」でしょうけど、グレッグは…。「呉五里」しか思い浮かばなかったので、そう打ったら、ひと文字多くていいわぁと言って喜んで帰りました。あとでグレッグという彼に会ったら、Tシャツの胸に「呉五里」とプリントしてありました。僕に見せたかったようです。
どこかのパーティからの帰り、時間は午後8時頃でしたか、並びの家のオバサンが泣きながら「お金貸して、20ドルでいいから」と僕の腕をつかみました。「どうしたの?」と聞くと、「グリーンレイクで車が壊れて路上に放置してきた、早くレッカーを呼ばないと撤去されちゃう」と言います。ポケットに5ドルしかなかったのでそれを渡し、後で持ってゆくよ、と言い、家に入り引き出しから20ドルを出して部屋を出るとすぐにRが帰ってきました。「どこ行くの?」と言うので「並びのSの家に金貸しに行く」と言うと、「なぜ」、「車エンコだって」、「またか、私が行くわよ」。この手で近隣からお金借りまくってたんですね。Rに怒られてオバサンは翌日僕に謝りに来ましたが、5ドルは返ってきませんでした。
最後におかしかった大騒ぎ。Secret Records君たちとエリオット湾に釣りに行き、「うー寒い」と言いつつダウンタウンまで歩く途中に、人だかりがしていたので立ち止まってみると、そこには巨大なアシカが2匹プフーッといたのでした。アシカって結構足(ヒレ?)が早いので、上陸して襲ってきたらひとまりもない。しかしながら、珍しい大型海獣ですから見ていたい…。しばらく眺めていたら、ザパーッと水没し、どこかへ行ってしまいました。アシカは僕たちを眺めていたのでしょう。 |