小説の部屋

お気楽少女 ある日のトモリちゃん


   

その2

第3章 1年4組は大騒ぎ

 体育の1年1,2組と美術室に移動した1年3組の教室からほとんどの生徒の姿がいなくなって4組だけが国語で生徒が残った。長い茶髪を三つ編みにした日直が前の時間に黒板に書かれた物を消し黒板消しを廊下に設置されているクリーナーで清掃する。体力が有り余った男子が教室入口の鴨居で懸垂し、廊下でふざけて友達とじゃれてプロレスごっこでクラスメイトにコブラツイストをかけていてかけられた男子は
「イテテテーッ、ギブ、ギブアップ」
と叫んでいる。中学1年生の廊下に吹奏楽部の部員募集ポスターが貼ってあり年中無休で土日も練習という運動部ばりの中学校も世の中にはあるらしいが、松波第四中学校吹奏楽部の練習日は月・火・木・金曜日で水曜日は定休日らしい。ポスターに男子歓迎とあったのでご多分に漏れず松波第四中学校でも男子部員は少ないようだ。少女らしいタッチでフルートを吹くイートンジャケット姿の女子生徒のイラストが描いてある。
 廊下の窓で外を見ていた菅沢真由美の背中を高橋典子がポンとたたいた。そして菅沢は逃げる高橋をムキになって追いかける。
「典子待ちなさいよぉ」
「やだぴょーん」
と高橋は逃げるので菅沢は1組方向へ高橋を追った。中学1年生の二人はまだスカートが膝下5cmと長い。
「キャ〜〜〜〜〜〜〜! キャ〜〜〜〜〜〜!」
とポニーテールを振り乱し菅原がレベルメーター振り切れるような怪音波を発しながら高橋を追い廊下を走り回っていてじつに楽しそう。1組の先にある廊下の端にあるトイレの前で高橋は菅沢につかまった。高橋は菅沢に左腕をつかまれていた。
「典子もう許さないわよ」
「真由美につかまるほどあたし間抜けじゃないぴょーん」
と言って高橋はするりと菅沢の手を抜けて今度は4組の方へ走っていった。菅沢もそれを追って走る。高橋は1組の教室で体育の着替えを終えて出てきた男子とぶつかったが
「ごめ〜ん」
とだけ言って逃げていきその後を菅沢が追ってきたのでその男子はあわてて窓側の壁に寄って菅沢を避けた。美術室へ向かう3組の生徒たちの間を縫うようにして高橋は逃げる。4組前の廊下で菅沢ははぁはぁと息を切らしている高橋の左肩を捕まえて抱き付くようにして
「典子を捕ぅーかまえたぁー」
と言っていると菅原の背中を森という男子がポンとたたいて逃げたので菅沢は今度はちょっかい出してきた森という男子をおっかけ回し始めた。
「わーっ」
と言いながら森は1組方向に走る。1.2組から体育に行くために出てきた生徒たちは何事かと森を見て慌てて避ける。森は女子に追われ男子トイレに逃げ込もうとしているのだ。松波第四中学校は元気な生徒が多く、よく男子と女子が廊下や教室で追いかけっこをしているが異性に追いかけられるとトイレに逃げ込むという暗黙のルールがあるらしい。異性に追いかけられるとトイレに逃げ込むのはいかにも小学生じみているが中学1年生はまだまだ小学生気分というところだろうか? 菅原はあと一歩で森が男子トイレに駆け込んで女子から逃げ切れるところで森の右肩をつかんで捕まえた。そして菅沢がわーわー言いながら森のベルトをつかんで逆に女子トイレに引きずりこもうとしていた。
「うわー、菅沢放せよぉ」
と森は言いながら女子トイレから逃れようともがく。しかし菅沢は森を放さない。やがて二人は女子トイレ入口で膠着状態になり一進一退の攻防を繰り広げていた。松波第四中学校の生徒の間では異性のトイレに入ることは禁忌行為なので森は必死で菅沢の手から逃れようと
「このっ、くそっ」
と言いながらもがいていたが男子の森が力では女子の菅沢に勝ってもベルトをつかまれては不利だった。その騒ぎを聞きつけて男子と女子それぞれに加勢する子が現れて男子女子それぞれ3〜4人づつが女子トイレ入口でわいわいと小競り合いをはじめ男子生徒の森を引っ張る。女子生徒の中には喜々として森を引っ張る子も見られた。
「痛てーよ、菅沢放せよ」
と森が叫ぶ。
「ダメよ。森には女子トイレの中まで入ってもらうわよ」
と菅沢は森の腕を引っ張る。高橋も
「そうよ、森が先に真由美ちゃんにちょっかいを出したんだからね」
男子の江川が
「そんなの関係ないじゃん」
「そんなことないわよ」
「とにかく森には中まで入ってもらうわよ」
と菅沢が言うと
「いゃーっ、森が女子トイレに入ろうとしているぅ」
「変態ーぃ」
と他の女子たちがはやし立てる。森は
「お前たちが引っ張り込もうとしてんだろ」
とムキになって反論する。菅沢は
「元は森があたしに手ぇ出したんでしょ。男として責任取ってもらうわよ」
と言うと江川が
「森、お前って奴は菅沢に『手ぇ出した』んか」
と真顔で言うと高橋が
「ちょっと江川、変な事言わないでよぉ。真由美ちゃん、とにかく森を中に引っ張り込んじゃいましょ」
と言うと男子の木下と高田が
「こいつコエーっ」
「それでも女かよ」
と口を揃えて言うと高橋は
「それでも女よ」
と言って高田の足にケリを入れる。
「痛てっ」
と言って高田が思わず森の手を放したのでそれまで均衡を保っていた力のバランスがくずれた。慌てて高田も森をつかんだがその間に森の下半身が女子トイレの中に入り込む形になった。森は泣きそうな声で
「やめろよー。許してよぉ」
と言うと菅沢は
「許さない」
「森は女子トイレに入る変態だもんね」
と高橋が言うと他の女子が
「変態、変態…」
と女子の変態コール。女子がベルトをつかんで引っ張るので森のズボンがなかば脱げそうになっていた。それを見た江川が
「おもしれぇから森を女にしちゃおうか」
「いいねぇ、お前女になれ」
と木下が言ってベルトのバックルをはずそうとすると女子はキャーキャー言って盛り上がり森は
「やだよぉ。やめろよぉ。お前ら裏切んのかよぉ」
と泣きそうな声で言うが男子の裏切りがあり結局森はズボンは脱がされなかったものの女子トイレに引き込まれ解放された。菅沢の目的も達せられ騒ぎは収まった。
 他のグループの4組の女子生徒たちはスカートまくりをしていた。横尾さやかはお友達と教室後方のドアのところにある中村麻里沙の席の横でおしゃべりをしていた池沢純子の後ろからそーっと近付き膝下5cmのスカートを一気に腰までまくった。純子は不意に後ろからスカートをまくり上げられ
「イャぁ〜〜〜〜〜〜!」
と悲鳴を上げ慌ててスカートを押さえその場にしゃがみ込みそうになった。この子はコギャルのようにスカートの中に体育のハーフパンツをはいていなかったためピンクのショーツが丸見えになってしまった。さやかは続いて佐藤若菜のスカートをまくった。若菜は下にハーフパンツをはいているからスカートをまくられても平気なはずなのに
「キャ〜〜〜」
と言うのがおかしい。若菜のスカートは規定の膝下5cmなのでスカートの下にハーフパンツをはいても女子高生のように外からわからないのだ。クラスメイトにパンツ丸見えにされた純子は涙目で
「ちょっと、さやかやめてよぉ」
「ごめんね。下が生パンだとは思わなかったんで」
佐藤若菜が
「そうだよ、下にハーフパンツをはいてないと今みたいにスカートまくられたら見えちゃうよ」
「だってそんなのスカートの下にはいていたら暑いしぃー」
横尾さやかが
「でもやっぱりはくのが常識でしょう」
というと純子は信じられないと言いたそうな目で
「えぇーっ、今度スカートまくったらぶつからね」
「はいはい」
と言いながらさやかは
「純子のパンツはピンクだったね」
若菜が
「純子ってかわいいのはいてるじゃん」
「だからって男子がいるところでまくる事ないじゃん。見られちゃったよぉー」
と純子がムキになって言うのでさやかは
「今度はパンツも脱がせて男子を大喜びさせようか」
と言うと他の女子たちは口々に
「言いねぇ、やろやろ。純子のストリップ」
と言って、さやかが純子のスカートをまくり上げると純子は「イヤーッ」と絶叫してその場にしゃがみ込んでしまう。佐藤若菜が純子をはがいじめにして立たせると中村麻里沙が純子のスカートを男子に見えないように気を使いつつまくり上げたままホールドし、さやかが純子のショーツのゴムに手をかける。純子は
「イャぁ〜〜〜〜〜〜! さやかやめてよぉー」
と半泣きになるのでさやかは
「冗談よ」
と言って若菜と麻里沙に純子を放すように目で合図して純子は自由になった手であわててスカートを下ろした。4組の男子たちはその様子を見ていないふりして「ラッキー」と思いながらしっかり盗み見していた。休み時間の中学1年生の廊下はじつに騒がしい。
 3時間目が始まるチャイムが鳴る頃廊下をかけ回る4組の生徒たちもバタバタと教室にかけ戻る。チャイムの時点で席に着いていない人を書き込む表が廊下に貼ってありクラス単位でチャイム着席違反の数の少なさを競っていて日直が違反が出ないように厳しくチェックしていいるからで
「チャイム着席ぃー!」
と日直が合図するとあわてて教室に駆け込み自分の席に滑り込む。この時間も違反ゼロ。1年4組の教室に国語の清原貴子先生が来た。清原貴子先生は身長148Cm 27歳で今日はベージュのニットアンサンブル・黒ズボンの服装だ。先生が来て日直の
「起立、気をつけ、礼」
の号令で授業が始まり中学1年生の廊下から人気が絶えた。
 1年4組の教室を初めとする松波第四中学校の教室は

     [ 教壇 ]
     男女男女男女
     男女男女男女
     男女男女男女
     男女男女男女
     ・・・・・・
     ・・・・・・
     ・・・・・・

という具合に男女が1列づつ交互にならんでいるので男子からすると両隣が女子という素晴らしい配置だ。1年4組には中学1年生なのにもう茶髪っている女子生徒も何人か見られる。清原貴子先生はまず部首とつくりの話から。
「<しんにしかわ>とひらかなが読めるから電車に乗っている3歳の子でも駅名を読むことができるけれど英仏語は字が読めてもつづりがわからないと読めないんだよ」
と日本語の特性を話し
「<帽子>の帽は日の下に目です。大人でもここを日にする人がいるのでよく注意してね」
と言う。そして教科書46ページの地球温暖化とフロンの説明文の読解に入る。その説明文のフロンの使用と製造が禁止された話で清原貴子先生は
「十年くらい前にフロンの使用と製造が禁止されました。なんでかと言うとフロンは人体にも無害なためクーラーの冷やす装置や半導体の洗浄に使われていましたが、地球の温暖化やオゾン層の破壊につながるからです」
と生徒に説明する。校庭でやっている1年1,2組男子の体育にぼーっと見とれている男子に清原貴子先生は
「もうすぐ中間テストでここ出るよ。『まだ大丈夫』は、『もう危い』んだよ」
とするどい事を言って諭していた。


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