その後海老名−鎌倉間を何度も首に手紙をしばった白鳥が女子高生がケイタイでメールをやり取りする感覚で往復し礼香と佑奈たちの文通が続いた。それゆえ海老名市と鎌倉市にUFOがよく出るという噂が立ち多くのUFOウォッチャーが押し寄せた。あるUFO研究家の集会で
「おい」
「何だよ」
「聞いたか?」
「何を」
「海老名のUFO」
「あぁ、キリンの形をしているというやつな」
「久しぶりの新型UFOじゃないか」
「でもかなり小さいUFOだっていうじゃないか」
「あぁ、きっとバルタン星人Jr.みたいに小さな宇宙人が乗っているんだよ」
「おおかた誰かがラジコンで飛ばしていたずらしているんじゃないのか」
「翼のないものは大気圏内では飛べんよ。だからUFOに決まっている」
「そんな理由だけで宇宙人の乗り物と断定するのはどうかな」
「よく目撃されるているのは海老名市の大塚町だ」
「そこがどうかしたか」
「そこには大塚亀山古墳という前方後円墳がある」
「だから?」
「その古墳がUFOの基地だ!」
「まさか?!」
「古墳というものはなぜ作られたか知っているか?」
「天皇や土地の豪族の墓だろ」
「墓だけならわざわざ盗掘(墓荒らしに副葬品を盗まれること)されるのを覚悟であんな目立つものを多くの労働力を投入して作るこたぁない」
「だったらなんなんだよぉ?」
「宇宙と交信するための基地だ」
「宇宙と交信するための基地?」
「そう、ナスカの地上絵を想像すればわかるだろ」
「でも石棺から人骨が出ているぜ」
「埋葬されているのは天皇や土地の豪族ではない」
「だったら誰なんだよ。人骨が出ているのは事実だろ」
「あれは人柱だ」
「人柱ぁ?」
「昔はよく人柱を立てたもんだぜ」
「うーむ」
「秋田県の亀ヶ岡遺跡から出土した縄文時代の遮光器型土偶だって宇宙人の姿を映した物だって言われているぜ」
「でもあれは子孫繁栄のためのまじないじゃ…」
「秋田県では遮光器を使う風習はない」
「ではいったいあれは…」
「遮光器型土偶は宇宙服を模したものだとNASAだって意見を出している」
「あのNASAか?」
「おう」
「アメリカの?」
「そうだ」
「スペースシャトルを飛ばしている?」
「ほかにNASAってあるのか?」
「いや」
「熊本県山鹿市にチプサン古墳という全長44mの前方後円墳がある」
「それが?」
「石室は盗掘を受けていたが石棺の内壁に宇宙人がUFOでやってきたときの様子とされる絵が描かれている」
「信じられないな」
「チプサンという古墳の名前もアイヌ語で『船下ろし』を意味する『チプサンヌ』に由来するという説があるぜ」
「アイヌって北海道だろ?! なんで九州の熊本の古墳に関係あるんだよ」
「アイヌ民族は縄文人の末裔と言われ、本州の中央部に大和民族が侵入してきたのに追われ分断され北はアイヌ、南は熊襲や隼人になったと言われている。だから言語的につながっていても不思議はない」
「……」
「そして『船下ろし』の船は宇宙船さ」
「うむ」
「天孫降臨の伝説は知っているだろ」
「日本書記や古事記に書いてあるあれか」
「そうだ」
「天照大神の孫のニニギノミコトが高天原(たかまがはら)から豊葦原(とよあしはら)へ降臨した」
「うん」
「つまり天皇家の祖先は宇宙から来て地球に降り立ったというわけだ」
「そんなバカな」
「大阪府交野市に磐樟船(いわのくすふね)といわれる大きな岩がある」
「それがどうした?」
「天孫一族のニギハヤヒノミコトが降臨するときに乗ってきたといわれている」
「そんなの伝説だろ」
「いや、これは大気圏突入用のカプセルだ」
「えーっ、まさか」
「他にも岩船や舟石と呼ばれる同様の伝説は全国各地にあり、いずれも神の降臨と関連している」
「そう言われれば岩船や舟石という巨石は多いな」
「だろ」
「つまりあのキリン型UFOには神がおわすのか」
「たぶんな」
いろいろと解釈が乱れ飛びUFO関係のホームページやブログでは話題騒然であった。
*****
海老名市大塚町のキリン型UFOは当初UFO研究家の間だけで噂されていたのだが海老名市役所や海老名観光協会に
「海老名にUFOが出るって本当ですか?」
「UFOが見られる古墳へはどうやって行くんですか?」
といったUFO関係の問い合わせが日に日に増えてゆき、UFO見物に海老名まで来る人が増え海老名駅では
「どこに行けばUFOが見られるんですか?」
という質問が増えキリン型UFOは地元の人達にも知られるようになり大塚商店街の和菓子舗岡田では新製品 宇宙人まんじゅうとUFOせんべいが売りだされた。まんじゅうには宇宙人のイラストが焼き印されあんこも宇宙人の血をイメージしてうぐいすあんになっている。せんべいはアダムスキー型UFOの形をしている。同商店街の田中酒店ではオリジナルラベルの清酒 宇宙人の里と円盤ワインが売り出された。洋菓子ロリアンではUFOクッキーやアダムスキー型UFOの形をしたケーキ 未知との遭遇が売られ、海老名市もそれらに便乗して「UFOの飛ぶ町 えびな」のキャッチフレーズで海老名市を全国的に売り出すことにした。これらの品はJR・小田急・相模鉄道の海老名駅でもブースを特設して販売され、東名高速道路の海老名サービスエリアでは売れ筋No.1に躍り出た。
それまで海老名市教育委員会も大塚亀山古墳なんて見向きもしなかったのに急きょ学術調査をすることを決め市議会に予算を付けるよう請願を出した。インターネットのUFO関連サイトを通じてUFOの基地がある?!と噂され全国に有名になった大塚亀山古墳の頂にパラボラアンテナを立てて宇宙人との交信を試みる人や虫取り網でUFO捕獲を試みる人が現れて警察が出動するなど大塚亀山古墳は一躍観光名所?になり海老名駅の名所案内にも「大塚亀山古墳」の文字が書き加えられた。
そういった海老名ローカルのUFOブームだったのが全国放送のワイド番組「朝ワイド日本」の『日本のはやりもの』のコーナーで取り上げられ東名高速道路の海老名サービスエリアから生中継されたので途端に全国規模でのUFOブームがわき起こった。以下はその番組の様子である。
*****
| 森田由美 | 「ただ、ごらんのように平日の朝にもかかわらずUFOグッズを買い求める人達で駐車場はほぼ満杯で、連休ともなりますと海老名サービスエリアの数キロ手前から本線上に駐車場が空くのを待つ車やバスが列をなし渋滞の原因として社会問題化しています」 |
| スタジオ | 「たしかにその様子では連休などにはものすごい騒ぎになりそうですね」 |
| 森田由美 | 「はい、海老名サービスエリアには『なんでいつ行っても混んでいて駐車場に入れないんだ!』という苦情の電話も殺到しているそうです」 |
| スタジオ | 「それは深刻な問題ですね」 |
| 森田由美 | 「高速道路会社によれば高速道路の本線上に車を止めてサービスエリアに入るのを待つのは渋滞の原因であるのみならず、事故を誘発しかねないのでやめてほしい。休憩や買い物は近隣のサービスエリア・パーキングエリアへ迂回するようにとのことでした」 |
| スタジオ | 「行っても入れないのでは何のためのサービスエリアかわからないですからねぇ」 |
| 森田由美 | 「海老名サービスエリア混雑で給油を断念して足柄サービスエリアへ向かった乗用車が本線上で燃料切れを起こし立往生したところへ大型トラックが突っ込み4人が死傷する事故も起きています」 |
| スタジオ | 「それは深刻な問題ですね」 |
| 森田由美 | 「高速道路のサービスエリアだから入場規制もできないので高速道路会社も困っているそうです」 |
| スタジオ | 「なんとかならないものでしょうか?」 |
| 森田由美 | 「はい、交通ルールを守って事故のないようにUFOグッズを買いにきてとのことでした」 |
| スタジオ | 「今朝は森田さんに神奈川から伝えてもらいました」 |