
*****
石田莉奈は海老名市立大塚中学校の1年生。ある日1年3組の教室で親友の長谷川茜とおしゃべりしていた。ファッションやタレント、昨夜見たドラマ、どこのクラスの男子がカッコいいなど女子中学生らしい話題である。
話が先週放送していた心霊スペシャルになったおり清水麻衣と田辺絵里が割り込んできて麻衣が
「あのね、うちらの町内に心霊スポットの幽霊ホテルがあるよね。今晩探検に行こうよ」
「えーっ、いやよ。何か出るかもしれないじゃないの」
と絵里が反論するのに麻衣は
「バカねぇ、何か出そうだから探検になるんでしょ。絵里は来るよね?」
「うーん、石田さん達も行くのならいいわよ」
と言う。
「もちろん行くいくぅ」
と莉奈が楽しそうに言う。絵里は茜と莉奈が渋るのを見越して断ろうと考えていたが莉奈にあっけなく参加され断る理由を逸してしまいなんとなく探検にゆくことになってしまった。莉奈は
「茜ちんも来るでしょ」
「わたくしはそうゆうのはご遠慮しますの」
「いいじゃないの、何か出たらあたしが守ってあげるから」
「莉奈ちゃんって何か必殺技がありますの?」
「えっ、別にないけど…」
「じゃあどうやって守ってくださるの?」
「それは…。そうだ、何かあったら上月先輩に助けに来てもらって術でびび〜っとやっつけてもらおうよ」
「佑奈お姉さまはゴーストバスターズじゃありません!」
「なんでもいいから茜ちんも行こっ」
「いやですの!」
「茜ちんって薄情だなぁ。親友が決死の覚悟で幽霊ホテルに突入するっていうのに一緒に来てくれないんだ。莉奈ちゃんかわいそ」
「だったら行かなければいいでしょ」
「怖いけど行くところに進歩ってものがあるんでしょ」
「じゃあ莉奈ちゃんだけで進歩してきて」
と茜はニベもない。絵里もそこまではっきり断れればなぁと自分の優柔不断さを悔やんだ。
その夜7時過ぎ、3人は自転車で東台公園に集合した。茜はやはり来なかった。
「やっぱり麻衣、探検にゆくの?」
と絵里は嫌そうだった。
「もちろんよ。ははーん、絵里怖いんだ。中学生にもなって弱虫ねぇ」
「怖くなんかないもん! いやなだけだもん!」
「あっ、絵里の背中に白い着物を着た女の人がへばりついてる」
「いや〜ん」
と叫ぶと絵里は莉奈にしがみついた。
「清水さんやめなよ。田辺さん怖がっているじゃないの」
「てへっ、ちょっとからかいがいがあったもんで、そろそろいこか」
と麻衣は自転車にまたがった。
3人は自転車で『幽霊ホテル』と通称されているホテルの廃墟へ行った。ここは老舗のホテルであったがバブルのおりに過大な改装工事に着手して資金繰りが悪化し倒産し廃墟となったところだ。真偽の程は確かでないがオーナー夫妻が客室で借金を苦に首をくくったとも言われている。一応囲いはしているのだが心霊スポットめぐりにきた人が勝手に穴を開け実質出入自由となっている。窓ガラスはことごとく割られ草はぼうぼうに茂っている。廃墟を前にして絵里は
「やっぱあたし帰るぅ」
と泣きそうな顔で言う。麻衣は
「一人で帰るのはいいけれどここまで来た以上途中で何かあっても知らないからね」
「やだっ、変なこと言わないでよ。石田さん一緒に帰ろう」
絵里がすがるような目で言う。莉奈はやる気満点で来ているので
「あたしは行くわよ」
「石田さん…」
絵里はいまにも泣きそうだ。1人で帰ることもできず絵里もホテルに入る2人についていく。懐中電灯を点し3人はホテルの中に入る。ロビーと思われるだだっ広い広間があるが備品はすべて撤去されさむざむしい。麻衣は階段を上っていく。2階には宴会場があり菊の間や桜の間と書かれた広間がある。
「へーっ結構広い宴会場だね」
と麻衣は感心したように言うがあとの2人は黙っている。2階を探検し今度は3階を探検する。各部屋を見て回るが畳敷きの和室がある。ふすまや障子は破れ放題でいかにもな雰囲気を出している。
「ねぇ麻衣、もう帰ろうよ」
絵里が言う。莉奈も
「清水さん、これだけ見ればもういいでしょ。ホテルの部屋なんて大して変わらないんだし」
と絵里の暴走にストップをかける。
「わかったわ、4階を少し見たら帰るわ」
「約束よ」
「うん」
莉奈と麻衣の間に帰る約束が成立して絵里は安心した。
3人は4階に上がり402号室に入った。ここも和室である。いいかげん退屈してきた莉奈は
「いくら見てもどこも同じ部屋よ。清水さん帰ろう」
「後少しだけ、ねっ」
と麻衣が答えるとどこかの部屋でガタンという物音がした。そしてミャ〜オという猫の鳴き声。住み着いていた野良猫が3人の侵入に驚いて逃げ出しただけなのだが精神的に限界が来ていた絵里が恐慌をきたし
「いや〜っ、ラップ音、化け猫ぉ〜っ」
と絶叫しながら一目散に部屋を飛び出していった。恐怖というものは伝染する。それまで心霊スポットめぐりを楽しんでいた麻衣と莉奈もとたんに怖くなってきて麻衣は
「ぎゃーお化けぇ、絵里待ってよぉ」
と駆け出す。
「ちょっと、やだ。あたし一人で置いていかないで」
あわてて莉奈も駆け出す。
バキッ
莉奈の左足が腐った床板を踏み抜いて膝まではまってしまった。
「痛ったぁい、なによこれ」
莉奈が足を床から引き抜こうとするが何かに足首が挟まってしまったようで抜くことができない。
「うそっ! やだ、抜けない。田辺さぁ〜んっ、清水さぁ〜んっ、戻ってきて〜っ、足が抜けないよぉ〜っ」
莉奈は声を限りに叫んだ。しかし一目散に逃げていった絵里も麻衣も戻ってこなかった。
「そうだ、携帯に電話しよっ」
莉奈は携帯電話の入ったカバンを探したが廃墟に電灯の設備などあるわけもなく莉奈が床板踏み抜いてつんのめった時に手に持っていた懐中電灯は3m先まで飛んでゆき莉奈とは反対側を向いて止まり部屋のドアを照らしている。カバンは莉奈の左前方2.3mの位置にあるのだが暗いので莉奈には位置を認識できていない。莉奈は手探りでカバンを探すけれどどこにもない。
莉奈は悟った。幽霊ホテルで身動きできず携帯もどこかにいってしまったために助けを呼ぶこともできないという絶望的な状況に置かれたことを。
「いやぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
その2へ
古墳少女佑奈をまず読むと世界観がよくわかります。
タリカス文芸部へ
小説の部屋へ
江東の詩へ
江戸川の詩へ
東松山の詩へ
座間の詩へ
その他の詩へ
掲示板に感想を書く
トップページへ
2002年吹奏楽部鑑賞レポートページへ
2003年吹奏楽部鑑賞レポートページへ
2004年吹奏楽部鑑賞レポートページへ
2005年吹奏楽部鑑賞レポートページへ
2006年吹奏楽部鑑賞レポートページへ
2007年吹奏楽部鑑賞レポートページへ
2008年吹奏楽部鑑賞レポートページへ