小説の部屋

逃亡少女『愛』


2003/10/14 脱稿    

逃亡少女『愛』

   

その1

第一章 決死の脱出

 少女は道なきうっそうと木々が生い茂る深い森の中を必死で逃げていた。木の下にはヤブが生い茂り少女は音を立てないようヤブコギをしながら進んでいた。少女はこの様なことに慣れているのか草が顔に当たるのにもひるまず進んでいった。中学生くらいの少女のゴムで二つに束ねた長い髪は泥がこびりつき顔や手の甲には木の枝が当たってできたひっかき傷がたくさんできていた。ジーパンの腰に下げたホルスターに入っているアーミーナイフが少女の唯一の持ち物であった。少女の身に着けている白いパーカーは何度も転倒したのだろう。泥まみれになっておりジーパンは木の枝で鉤裂が何か所もできている。とてもじゃないが年頃のおしゃれに敏感な少女のする格好とは思えない。少女は森の中でサバイバルゲームをしているわけではない。命を懸けた本物のサバイバルをしているのだ。少女はもう2日間この山中を飲まず食わずで逃げていた。追っ手ももちろん本気で少女を捕らえようとしているので少女の手の甲には格闘の折りについたアーミーナイフでの切り傷もあり、パーカーの袖も数か所裂けていた。少女はこれまでに追っ手を5人殺していた。少女の白いパーカーには返り血も飛んでいたがすでに茶色く変色し泥汚れと区別が付かなくなっていた。
 少女は油断なく周囲様子をうかがった。
「っ!」
後方に少女は鋭い殺気を感じる。追っ手に追いつかれたのか! 接近してくる。こちらに気付いているのか! 不意に少女の後方のヤブの中から3つの人影が現れた。それは高校生位の男子1人に女子2人だ。3人ともアーミーナイフを手に持っている。少女も腰にさしたアーミーナイフを抜いた。無言で男子が襲いかかってくる。少女は一撃目をかわしアーミーナイフで反撃する。カキーンと鋭い音を立てて二人のアーミーナイフがぶつかる。ヤブの中なのであまり少女は自由に動き回れないが左手で男子がアーミーナイフを握る右手首をつかんで攻撃を封じた。男子は自由な左手で少女に殴りかかってくる。少女はアーミーナイフでその左手を切り付ける。真っ赤な血しぶきが飛び二人の顔にもかかる。二人ともよく訓練された手だれなので「痛い」とか声を上げることはなくヤブがガサガサいうだけの非常に静かな戦いであった。男子の左手を払いのけた少女は隙ができた男子の心臓に無言でアーミーナイフを突き立てる。男子は「ぐえっ」という小さなうめき声を上げるとその場に崩れ落ちた。少女がアーミーナイフを抜くと男子の胸からドクドクと血が流れ出た。男子が倒されたのを見て女子2人は同時に少女に襲いかかってきた。少女は1人目のピンクのノースリーブタートルネックセーターを着た女子のアーミーナイフとつばぜりあいになった。少女はタートルネックセーターの女子のアーミーナイフを突き返し反転して後ろから切り付けてきたもう一人の黄色いTシャツを着た女子のアーミーナイフをアーミーナイフで受けた。少女はTシャツの女子を足ばらいにすると素早く身をひるがえしタートルネックセーターの女子のところへ間合いを詰めた。この女子は山道を駆け回るのにノースリーブから出ている腕が木の枝で傷だらけになり血がにじんでいた。しかしまったくそれを気にしてない様子である。少女はタートルネックセーターの女子が反応できないような素早さでその喉をアーミーナイフで切り裂いた。切り口からは真っ赤な鮮血が吹き出しごぼこぼという気持ち悪い音がタートルネックセーターの女子が呼吸をするたびにした。少女はその女子を打ち捨て残るTシャツの女子と対峙した。Tシャツの女子はただ少女を殺すことだけを考えているようににらみ付けていた。猿(ましら)のような軽やかなステップを踏んでTシャツの女子は無言で少女に躍りかかってきた。少女は体をかわしてその攻撃から身を守る。Tシャツの女子は息も付かずに次の攻撃を仕掛けてくる。いけない! あの足を止めなくてはと少女は思う。女子が飛び掛かってくる。少女はそのアーミーナイフを握った右手首をむんずとつかみ投げ技で女子を地面にたたき付けた。一瞬だが女子の動きが止まった。今だ! 少女はその女子の心臓にアーミーナイフを力任せに突き立てた。女子は逃れようともがいていたがやがてその抵抗は弱々しくなりひくひくとしたけいれんを起こしやがてTシャツの女子の動きは止まりTシャツが真っ赤な鮮血に染まりそしてそれは茶色く変色した。

 少女が我に返ると足元に3人の男子・女子の死体が転がっていた。あぁまた人を殺してしまったと少女は後悔した。少女の名は杉田愛という。本来なら中学3年生であるが愛は中学校には通っていない。決して愛が不登校少女というわけではない。愛が4歳の時秘密結社ヤマーワに誘拐され15歳の今日までずっと捕らわれの身だったのである。
 ヤマーワは愛が3人と格闘した森のさらに山を越えた向こうにある秘密基地で誘拐してきた少年・少女を洗脳し軍事訓練をしてテロリストとして養成していたのだ。ヤマーワの秘密基地はあまり使われていない企業の古びた研修所という名目で建てられているがその地下には射撃場や潜水用のプール、飛行機のシュミレーターなどの施設があり少年・少女に射撃・爆破・潜入・誘拐・外国語・暗号解読・サバイバル・乗り物の運転といった軍事訓練が行われておりヤマーワは和製テロリストを海外に輸出していたのだ。新メンバーになる少年・少女を誘拐してくるのも『演習』とされヤマーワの育てた少年・少女テロリストが計画及び実行に当たっていた。
 ヤマーワの育てたテロリストは中東某国の副大統領暗殺や油田の爆破、航空機乗っとりなどに暗躍しその筋では高い評価を得ていた。数少ない目撃証言に東洋人の少年を見たというものがあり捜査当局の目を東洋にそらせる効果もあった。少年・少女をテロリストに養成するのは子供なら相手に警戒されないことと子供から養成すれば活動できる期間が大人を養成するより長いためだ。日本のパスポートが世界的に信頼が高く多くの国でビザが不要というのも見逃せない利点である。
 ヤマーワの首領は上田鮎子という14歳の少女である。しかし上田鮎子もまたその背後にいる黒幕が立てた傀儡(かいらい)といわれておりその正体は不明である。ヤマーワのメンバーは鮎子に絶対服従を刷り込まれており鮎子の言うがままに任務に就く。鮎子の下には12−13人の幹部がおり鮎子の命令の下テロリストの養成や作戦の実行の監督に当たっていた。

 国内でヤマーワが起こした事件を紹介すると<N県知事暗殺事件>があげられる。これはN県知事の元に「地球解放戦線機構」を名乗る者から
「県の施設を爆破する。それを回避したければ3億円指定の口座に振り込め」
という脅迫文が届けられたのだ。知事は一応警察に届けたものの知事もN県警もいたずらとして特に捜査もしなかった。ところが指定の期日を過ぎて数日後N県立S高校が爆破されて生徒や教職員およそ570人が死傷する事件が起きたのだ。これはヤマーワの少年テロリストがS高校の制服を着て『登校』し通学カバンに隠した時限爆弾をS高校の校舎に多数仕掛けた後『早退』しタイマーにより起爆されN県立S高校はがれきの山と化したのだ。「地球解放戦線機構」を名乗る者からマスコミ各社に犯行声明が送られ、N県知事とN県警が脅迫文に対して何もしなかったことに非難が集中し一部の市民団体は県知事のリコール請求に向けた運動を開始するほどになった。
 それからしばらくしてまたN県知事の元に「地球解放戦線機構」を名乗る者から
「県の施設を爆破する。それを回避したければ3億円指定の口座に振り込め」
という脅迫文がふたたび届けられたのだ。今度は知事はまじめに受け取り警察に届けN県警も所轄と連携して県立高校を中心に県の施設を厳重に警備した。生徒の安全のため県立高校は無期限休校し市立の小中学校もそれに倣うところが出た。もちろん知事は金を振り込むようなことはせずテレビに出演して知事は
「地球解放戦線機構諸君! 対話の機会を与えてくれ」
と訴えたが地球解放戦線機構からは何の反応もなかった。
  その数日後の夜N県立文化会館で東京のオーケストラのクラシックコンサートが行われた。多くのクラシックファンがN県立文化会館の前に会場を待つ列を作った。この日は開場されてもなかなか列が進まなかった。それはアイドルのコンサートのように警察官が入場者のカバンの中身を厳重にチェックして万全を期したからだ。その列の中に女子高生川田英子がいた。英子は熱心なクラシックファンというわけではなかった。その正体はヤマーワの少女テロリストであった。英子は警察官にカバンの中身を見せるとおさいふと携帯電話、プリクラを貼ったプリ帳、ジュースのペットボトル2本、ハンドタオルが入っていた。特別不審なものはなかったので警察官は英子を通した。しかし演奏が佳境に入る頃観客の英子の持っていたカバンが突然爆発した。ホールという仕切りのない広大な限定空間を爆風が駆け抜けホールを倒壊させるまでには至らなかったがおよそ350人の観客と楽団員が死傷した。もちろん持ち込んだ英子も爆死している。ヤマーワの少女テロリスト英子がジュースのペットボトルに入れて持ち込んだ高性能の液体爆薬と携帯電話型起爆装置を警察は見抜けなかったのだ。演奏会場は一瞬にして地獄絵図と化していた。血まみれとなった生存者がよろよろとホール出口に向かいその周辺は夜明けまでパトカーと救急車のサイレンが鳴り響いた。また「地球解放戦線機構」を名乗る者からマスコミ各社に犯行声明が送られ、ワイドショーのコメンテーターたちはN県知事とN県警の無能を声高に避難した。N県では

   県営バスに爆弾が仕掛けられた
   県立病院に爆破予告があった
   次は県庁が爆破される
   県の道路公社の有料道路が危ない

といったデマが飛び交い県営バスや県立病院の利用者が激減する騒ぎとなり地球解放戦線機構はN県民を恐怖のどん底におとしいれていた。
 県議会も紛糾し野党はここぞとばかりに県知事に
「知事は本件に関してどう収拾されるおつもりか!」
と詰め寄り、知事は
「テロリストに金を払うことは断じて致しません! 県警及び警察庁、公安の総力を挙げて犯人検挙に当たる所存で…」
知事の答弁はヤジと怒号にかき消された。
  紛糾する県議会はテレビのニュースでも全国に放映されたのでヤマーワはそれを支払い拒否と受け取り予告なく次の作戦に踏み切った。一般の航空利用者は知らないだろうが地方空港の多くは県営の第3種空港である。よってN空港も「県の施設」に該当するのだ。N空港は通常から警備が厳しくアメリカの航空機テロ以来開港以来最高水準の警備を敷いていたが連続爆破事件を受けて空港に入るだけでも搭乗券をバスを降りるところでチェックされ持っていない人は乗ってきたバスでそのまま送還させるという厳しい処置を取っていた。知らずに来て送還されそうになり警察官に殴りかかり公務執行妨害で逮捕された出張に向かうビジネスマンも出るなど混乱を極めた。バスを降りると今度はターミナルビル入口で身分証明書の提示とカバンを開けての手荷物検査が行われた。
 しかし最も利用客の多い月曜日の朝の東京行きのチェックイン時刻に事件は起こった。その朝バスから降りてきた乗客の中にピンクのキャミソールの上に薄い白のカーディガンを着てデニムミニスカートをはいた女子高生風の少女がいた。ターミナルビル入口の身分証明書の提示とカバンを開けての手荷物検査でその少女ははヤマダ エミ名義の東京行き航空券とN県立M高校2年生山田絵美の学生証を持っていた。警察官が女子高生が平日に飛行機に乗るのはおかしいと思い
「高校生が平日に飛行機でどこ行くの?」
と尋ねると山田絵美は
「体育祭の代休でお休みだから東京のおじいちゃん家に行くんです」
と答えた。警察官は年のためN県立M高校の問い合わせると確かに今日は体育祭の代休でお休みで2年C組に山田絵美という女子生徒がいると確認された。しかし絵美の学生証は偽造で写真も別人でありこの警察官が電話ではなくFAXでN県立M高校に照会していたら事件は未然に防げたであろう。女子高生がテロリストなわけあるまいという油断があったのかもしれない。絵美は背負っていた小さなリュックサックをテーブルの上に載せて口を開けた。婦人警察官が
「中を拝見します」
と持ち物を改めると二つ折の携帯電話、お友達と撮ったプリクラをたくさん張り付けたプリ帳、ジュースのペットボトル、おさいふ、使い捨てカメラ、定期入れ、N県立M高校の生徒手帳、4色ボールペンがあった。女子高生が持っていそうなものばかりで
「はい結構です。ありがとうございました」
と婦人警察官は絵美をチェックポイントを通した。絵美はチェックインカウンターに直行せず出発ロビー内のおみやげ店を見て回った。空港内には多くの制服警察官や空港が雇った警備員が配置につき不測の事態に備えていた。このほかに無線を持った私服の警察官が乗客のようなふりをして空港内を警備しているのが見てとれた。絵美はチェックインカウンターに行列する乗客に程近いベンチに腰を下ろし携帯電話を取り出した。普通の女子高生がするようにメールを打つしぐさをするがこれは起爆タイマーを5分後にセットする死のメールであった。その絵美のしぐさには警備する誰も注意を向けなかった。絵美のジュースのペットボトルに高性能の液体爆薬入っているのはもちろんのことと使い捨てカメラに固形爆薬がつまっている。なので絵美はこのカメラをX線に通すわけにはいかない。絵美は携帯電話の画面の数字が05:00から04:59,04:58・・・とカウントダウンされていくのを確認するとパチッという音を立てて二つ折の携帯電話を閉じ人待ち顔で運命の瞬間を待った。
 絵美の携帯電話の画面の数字が00:00になった瞬間起爆装置が作動しペットボトルの液体爆薬と使い捨てカメラの固形爆薬が爆発した。爆心地にいた絵美は跡形もなく吹き飛びチェックインカウンターに並んでいる多くの乗客たちも巻き添えを食って爆風になぎ倒さた。出発ロビーのカラスは粉々に吹き飛びその破片がバスを降り手荷物検査を受けていた乗客や警察官に降り注いで多くのケガ人を出した。空港内にいた多くの警察官が駆け付けて負傷者の救護と爆発の原因調査に乗り出した。N空港は怒号とサイレンの飛び交う修羅場になった。ダイハード2の1シーンを見ているようだ。絵美の近くにいた多くの乗客は死亡し、20m程度離れていた乗客や空港職員らも爆風で飛んできたものの直撃を受け重傷を負った。パニックを起こし我先にとターミナルビルの出口に殺到した乗客たちは将棋倒しになり多数の圧死者が出た。警察は空港を封鎖して一人も出入りできないよう道路に検問を置いたがすでに犯人の絵美は死亡しているので全く無意味だった。あれだけ厳重な警備を敷いたのになぜ?という問いには誰も答えられない。N県内に待機していた警察庁の特種部隊SWATも遅まきながらN空港に駆け付けたが強力な爆発物を使用したという以外犯行方法を突き止められなかった。
 その日の夕方「地球解放戦線機構」を名乗る者からまたマスコミ各社に犯行声明が送られ次はN空港ターミナルビルではなく次は離着陸中の航空機を狙うという予告が出された。出発ロビーが半壊したN空港は使い物にならないこともあり当面閉鎖が決まり全便欠航の手配がとられた。空港内の航空機は燃料をすべて抜かれ空港ターミナルビルからもっとも遠いエリアに牽引されてゆき駐機された。警察官が航空機と燃料タンクの周りに十重二十重の警戒を敷いた。しかしこれはフェイクで「地球解放戦線機構」の空港テロはその後なかった。
 渦中の人N県知事は連日マスコミに追い回される時の人となった。2度に渡り爆弾テロを阻止できなかったことで全国民の激しい非難を浴びていた。それ結うワイドショーのレポーターが朝知事公館を出て登庁し夜遅くに知事公館に帰り付くまで密着していたのだ。そのN県知事が多くのマスコミ関係者の取り巻く中暗殺される事件が起こったのだ。ある朝N県知事はいつも通り迎えの公用車に乗るべく知事公館を出てきた。何かコメントを取ろうとするレポーターと押し戻そうとするSPの間で小競り合いになった。その間知事はレポーターとSPの間に挟まれ身動きできない状況になった。その瞬間を狙撃手は逃さなかった。知事公館から200m離れたビルの屋上に潜んでいた杉田愛は洗脳されていてヤマーワの鮎子に命じられるまま事の善悪など考えずN県知事をライフルの照準機にとらえていた。そして知事公館前の小競り合いのさなか眉一つ動かさずライフルの引き金を引いた。愛が放った銃弾はレポーターとSPの間に挟まれ身動きできないN県知事の眉間に命中し血しぶきが飛んだ。その場にいた一同は一瞬凍り付き誰も動けなかった。しかし次の瞬間テレビ局の女性レポーターが
「キャーっ」
と悲鳴をあげたのをきっかけに
「知事が撃たれたぞ」
「いやーっ、死んでる」
「皆その場から動くな」
「知事、知事、どうしたんですか?!」
「早く救急車を」
「警察を呼べ」
と怒号が飛び交った。SPはその場にいる全員の写真を記者から取り上げたカメラで素早く撮影し居合わせた人の位置関係の把握に努めると共に第二撃に備えた。しかし愛が余りにも遠くから撃ったため誰も愛の撃ったビルには注意を向けなかった。愛はライフルをしまうとエレベーターで下におりヤマーワの迎えの車で現場を後にした。知事は脳に損傷を受け即死だった。
 そしてマスコミ各社に「地球解放戦線機構」を名乗る者からまた声明文が送られた。それには
「県民の命を犠牲にして金を惜しむく悪徳知事を抹殺した」
という内容が書かれていた。そしてそれを最後に一連のN県での「地球解放戦線機構」によるテロは行われなくなった。

 こうしたテロはヤマーワの資金集めとその養成した少年・少女テロリストが成果に優秀であるかを全世界にアピールする場になっていた。この事件の後世界中のテロ集団からヤマーワに引き合いが殺到しヤマーワの少年・少女テロリストの価格が急騰した。
 上記のように杉田愛はヤマーワの優秀な少女テロリストであったが砲撃の演習のとき爆風に飛ばされて頭を強打し偶然にもその拍子に洗脳が解けたのだ。愛はヤマーワの秘密基地に連れてこられてから11年間自由に外に出たことがなかった。もちろんヤマーワの秘密基地では外部の情報も遮断されており愛は昭和が終わって平成になったことすら知らなかった。愛はとにかくここから逃げなくてはと演習中に隙を見て逃亡に成功した。しかしすぐにヤマーワは多くの追っ手を差し向けて愛を『回収』もしくは『消去』するよう命じた。感情の欠落した殺人マシーンと化した少年・少女がヤマーワに命じられるままに森の中を愛を求めてさまよっていた。ヤマーワは銃声で近くの町に気付かれるのを警戒し追っ手に火器の使用を禁じたため全員がアーミーナイフなどの刃物を持って追跡に当たった。愛にとってはこれはラッキーなことだろう。火器を使って攻撃されたら一人では到底勝ち目はない。愛はヤマーワは人目のあるところでは公然と手を出してこないのを期待して麓の町を目指してよろよろと山を下りていった。

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