
小説の部屋
2005/7/12 脱稿
古墳少女 佑奈2
その1
この小説を読む前に前作 古墳少女佑奈をまず読むと世界観がよくわかります。
そのあとは古墳少女佑奈3を読もう。
第1章 下駄箱の手紙
海老名市立大塚中学校2年生の上月佑奈は今日も吹奏楽部の練習に出ないで一人で下校する。佑奈は2年生になってから全然練習にも出ていないが決して吹奏楽部が嫌になったわけでも幽霊部員というわけでもなく去年中学校の近くにある大塚亀山古墳の石室に入ったときに偶然手に入れた魔力を秘めた勾玉で作った腕輪を奪おうとするもろもろの勢力との闘争に吹奏楽部のみんなを巻き込まないために自主的に練習に出ないのだ。佑奈だってみんなとクラリネットを吹きたいと思っている。佑奈が昇降口で下駄箱に上履きをしまおうとすると通学用の白いスニーカーの脇に水色の封筒が置いてあった。えっ、これってラブレター?! 一体誰からだろう? 佑奈は初めてのことなのでドキドキしながらその封筒を手にする。しかし佑奈には古谷という彼氏がいるからこの手紙の主とは付き合えないなぁと思った。表には「上月佑奈 様」とだけ書いてあり、裏に差出人の名前はなかった。佑奈はそれを少し不審に思ったが中に書いてあるのだろうとまわりで誰も見ていないのを確認して封を切り中を見る。何枚か写真が入っているようだ。それを手にとって見た佑奈は思わず「ひっ」っと声をあげて取り落としそうになった。それは佑奈が全裸でシャワーを浴びている入浴シーンと制服を脱いでいるシーンの写真だった。背景から察して自宅の風呂場と佑奈の部屋で撮影されたことは明らかであったが、中学2年生の佑奈は着替えや入浴の際はカーテンを閉めるなど外から見えないようにしていたのはいうまでもなく一体誰がいつどうやってこれを撮ったのか? と頭の中が真っ白になった。海老名市立大塚中学校2年生 上月佑奈 住所:海老名市… と佑奈の住所氏名も写真の右下に入れられている。だから誰が見てもこれが佑奈の恥ずかしい写真であることがわかる。佑奈は自分の事を見知らぬ誰かに知られていることにものすごくこわくなった。封筒には写真のほかに手紙が入っていた。それには<
「この手紙を読んだらすぐに誰にも言わず一人で体育館の裏に来い。
来なければこの写真を海老名の町中にばらまく」
と書かれていた。佑奈はこんな卑劣な行為をする相手に猛烈に腹が立った。やっつけてやる! といきり立って体育館の裏に向かった。
佑奈が体育館の裏にゆくと大塚中学生の生徒ではなく白人の女と身長が2m近くあるがっしりとした黒人の男二人が佑奈のことを待っていた。身長143cmの佑奈から見れば雲をつくような大男だ。女は佑奈がやってきたのに気付くと
「あたしはCIAのエージェント(情報員)のマーガレットよ。写真は気に入ってもらえたかしら?」
「あなたが撮ったの?」
「このトムが撮ったのよ。よく写っているでしょう。中学生のエロが感じられる傑作だと思うわぁ」
「世界中のロリコン男が泣いて喜ぶよ」
と野卑な笑いを浮かべもう一人の男の一人が言った。世界中のロリコン男が自分の恥ずかしい姿を見て泣いて喜ぶのを想像して佑奈は寒気がした。
「ジョニーにそう言ってもらえると撮影意欲が湧いてくるよ」
「いったいあんなものどうやって撮ったのよ。家の中に入ってこなくちゃ撮れないわよ」
トムがほこらしげに
「すごいだろ、留守の間に忍び込んでユーナの家中に超小型の隠しカメラを何十個も苦労して取り付けて約2週間にわたりユーナの私生活を撮り続けたんだぜ。ユーナのことがすべてよくわかったよ」
佑奈は私生活を覗き見していたというこの男に猛烈に腹が立った。
「これは盗撮という犯罪よ。許さない!」
と佑奈は指を組んで呪文を唱えようとした。佑奈は学校のそばにある大塚亀山古墳で手に入れた古代の魔力を秘めた腕輪を持っている。だから術を発動させれば大柄な外国人3人が相手でも十分に勝ち目はあった。女は
「ユーナ、やめなさい。それよりジョニー、もっといい物を見せてあげて」
「OK、マーガレット。ユーナ、これを見ろ」
とジョニーは写真屋がDPEのおまけにくれるようなポケットアルバムを佑奈に差し出した。佑奈は油断なく受け取りその内容に目を走らせると
「うそっ!」
と言って口に手を当てた。そのアルバムには封筒に入っていた写真とは別の佑奈の恥ずかしい私生活が写っていた。朝起きたばかりのとぼけまなこで髪はぼさぼさの佑奈が自分の部屋でブラをつけている姿などは中学2年生の少女が他人に絶対見られてはならないものだ。さらにページをめくっていくと佑奈の吹奏楽部の親友である泉崎礼香と高田瑞穂の入浴シーンなど他人には見せたくないであろう恥ずかしい姿まで写されていた。もちろんこちらにも礼香と瑞穂の住所氏名が入っている。マーガレットは
「ユーナとお友達の恥ずかしい写真をばらまかれたくなかったら抵抗せずにあたしたちについて厚木基地へ来て。ユーナが逃げようとしたり、あたしたちがユーナに倒された場合は仲間が明日の朝までに海老名市の全部の家のポストにこれらの写真を投げ込んで回り海老名市民は明日の朝刊と共にユーナたちの恥ずかしい写真を目にすることになるわ。どうする? 黙ってついてくるか戦って恥を三人でさらすか好きにして」
佑奈に戦う勇気はなかった。自分だけならともかく無関係の瑞穂や礼香まで巻き込めない。佑奈はぎゅっと唇をかんで従うよりない。
「わかったわ。そのかわり絶対にこの写真はばらまかないでよ」
「ユーナがあたしたちに協力してくれる限りは約束するわ。これからユーナに厚木基地に来てもらうわ」
とマーガレットは言った。トムが猿(ましら)のような身のこなしでひらりと体育館裏の塀を乗り越えるとジョニーが「わっわっわっ」と驚く佑奈をいきなり抱きかかえ荷物の受け渡しをするようにヒョイっと塀の向こうにいるトムに放り投げる。佑奈を受け取ったトムはエンジンをかけて待機していた車に佑奈を押し込む。そしてジョニーとマーガレットもひらりと塀を乗り越えてきて乗り込むと車は走り出した。運転手も金髪の外人でマーガレットに英語で指示を受けている。どうやら4人はCIAの仲間のようだ。車は大和市に入り米軍厚木基地のゲートの前で止まった。マーガレットは迷彩服を着た門番の兵士にIDカードを見せると車は基地の中に入った。基地の中では機関銃を持った兵士を乗せたジープが佑奈たちの車の伴走をした。
ある建物の前で車は止まり佑奈は降りるように言われた。機関銃を持った兵士が警戒に当たっている。マーガレットは
「ユーナが基地の中で抵抗したら殺してよいという命令を受けているの。だから蜂の巣になりたくなかったら決して術は使わないでね、特に火炎の術は。航空燃料に引火したら大爆発が起きるから」
「はい」
「素直に従ってくれないと困ったことになるわよ」
とマーガレットを先頭に建物の中に入ってゆく。佑奈が術を使うことを警戒して機関銃を持った迷彩服の兵士4人が佑奈を取り囲むようにして歩く。佑奈は
「なんであたしがこんな目に…」
とぶつぶつ言いながらついてゆく。佑奈は窓のない部屋に通された。マーガレットは佑奈にすわるように言う。兵士4人は部屋の四隅に立ち佑奈が不穏な動きをしないかと機関銃に手を掛けて見張っている。マーガレットは
「ユーナにはCIAのエージェントになってもらいます」
「エージェントって?」
「簡単に言えばスパイね」
「えーっ、なにそれ。本当にあたし?」
「そうよ。ユーナの術を使えばスパイなんて簡単でしょう?」
「スパイなんていやよ」
「そう、それなら予定を変更してこれから飛行機でユーナとお友達の恥ずかしい写真を海老名上空からばらまこうかしら。ジョニー、写真をここへ」
「あいよっ」
とジョニーはキャビネットを開けて段ボールを机の上に置いた。ジョニーが箱を開けると大量に焼き増しした佑奈と瑞穂・礼香の恥ずかしい写真が入っていた。
「どう、ただの脅しでないことがわかったでしょう。飛行機でまくのとポストに入れて回るのどっちがいい? ご希望とあれば今夜海老名駅前で配ってもいいわよ」
「やめてっ、言うこときくから…」
佑奈はもう泣きそうだ。中学2年生の少女にとってこんな写真をばらまかれたら学校に行けないどころかもう生きてはいられない。しかも親友の高田瑞穂・泉崎礼香まで巻き込んでしまうのだから。佑奈はマーガレットのいいなりになるよりなかった。
それから佑奈は厚木基地に毎日学校が終わると通いスパイとしての訓練を受けさせられた。ピストルを渡され射撃について教えられたり、中学生ながらバイクや車の運転、アクアラングを背負っての潜水、格闘術、尾行術、暗号術、サバイバル訓練、パラシュート降下や重い火器を背負っての行軍訓練など女子中学生がやるにはハードすぎるような軍事訓練を課されて佑奈は毎日へとへとになっていた。佑奈の両親は佑奈が吹奏楽部の練習で遅くなっていると思っているのでまったく佑奈のスパイ訓練には気付いていなかった。
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古墳少女佑奈をまず読むと世界観がよくわかります。
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