ピンポーン
泉崎家のチャイムが鳴る。黒のロンTとジーパンに身を包んだ礼香が「はーい」と返事をしながら二階の部屋から玄関に降りてゆくとピンクのちびTにデニムミニスカート、ルーズソックスの佑奈が立っていた。
「あっ、あの礼香…」
「上月さん何かご用?」
礼香は厳しいまなざしで佑奈を見た。佑奈は親友の礼香に「上月さん」と他人行儀に呼ばれてかなりへこんだ。
「あっ、あたし礼香に嘘ついていたこと謝ろうと思って…」
佑奈はそれだけ言うのがやっとだった。佑奈の様子に何かただならないものを感じ取った礼香は
「まっ、とにかく上がって」
ととりあえず二階の部屋に佑奈を通した。家人が誰も居ないので礼香は台所で紅茶を入れて部屋に持ってきた。佑奈はそれを一口すすって気分を落ち着かせて話し始める。
「前に礼香は『アメリカ留学には裏があるとしか思えない』って言ってたよね」
「うん」
「礼香の言う通りなの」
「どういうこと?!」
「じつはあたしCIAにエージェントになるよう脅されててそれでアメリカ行かなくちゃいけないの」
「エージェントって何よ」
「要するにスパイよ」
「なんで? 佑奈が術を使えばCIAでも敵じゃないでしょ」
「あたしの家にCIAが隠しカメラを留守の間にいっぱい取り付けてあたしの恥ずかしい写真をたくさん撮ってね、『言うこと聞かないと海老名の町中にばらまく』って」
「ひどい!」
「恥ずかしい写真を撮られたのはあたしだけじゃないの」
「えっ?!」
「礼香と瑞穂の家にも隠しカメラを仕掛けてね、礼香たちがお風呂に入っている姿とかも撮られているの」
「ええっ?! 本当?」
「うん、あたし写真を見せられたもん」
礼香は不安そうに室内をキョロキョロ見回した。
「もうカメラは片付けたって言ってたわ」
「本当?!」
「うん」
「アメリカ人ってなんて卑劣なの」
「それだけじゃなくって『古谷クンにも危害を加える』って…」
「で、佑奈はどうするの」
「アメリカに行くしかないわよ」
「だって」
「あたしがおとなしくアメリカに行かないと。礼香や瑞穂まで恥ずかしい思いをしなくちゃいけないんだよ」
「でも、だからって佑奈が…」
「礼香は吹奏楽部の練習があったから気付いてなかったと思うけれどあたし今まで毎日のように厚木の米軍基地に連れていかれて射撃やパラシュート降下などの軍事訓練を受けさせられていたのよ」
「本当?!」
「うん、日本ではできないような高度な訓練を受けさせるためにアメリカへ連れていく必要があるの。交換留学生っていうのは隠れみの」
「高度な訓練って何をするの?」
「ようするに戦争よ」
「佑奈の術を戦争の道具にするなんて許せない!」
「礼香にお願いがあるの」
「改まって何よ」
「あたしと交換で来るキャサリンという留学生はCIAのエージェントなの」
「本当?!」
「あたしの家族をホームステイして見張るってわけ」
「それじゃあ佑奈はCIAに逆らえないじゃないの」
「そうなの。だから礼香にはキャサリンという留学生が家族や古谷クンに危害を加えないように見守ってほしいの」
「わかったわ、佑奈。だから安心してアメリカに行って」
「もしアメリカであたしが失踪したらCIAに拉致されたと思ってね」
「えぇっ」
「そういう計画もあるらしいの…」
「佑奈…。いままでつらく当たってごめんね」
「礼香っ」
二人は抱き合っておいおいと泣いた。佑奈は
「この事は礼香だけが知っておいて。キャサリンには知っているそぶりを見せないで」
「わかったわ。瑞穂にだって黙っているわ」
「ごめんね、あたしが腕輪を拾ったばっかりに礼香や瑞穂まで巻き込んで」
「佑奈…」
二人は元の親友にもどっていた。
その6へ
古墳少女佑奈をまず読むと世界観がよくわかります。
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