
それから1ヶ月、佑奈も行軍訓練に参加することになった。基地の兵士たちとともにひたすら長距離歩き15日間野営をしその間に出されるミッションをクリアしていく敵地での実戦を想定した訓練だ。兵士たちは80キロの武器・弾薬・食料・水などの装備の入ったリュックサックを背負い機関銃を肩から下げている。佑奈はまだ子供ということで20キロのリュックサックを背負い軽機関銃を肩から下げている。軽機関銃といっても本格的な機関銃よりは軽いというだけでずっしりと佑奈の肩に食い込む。これらの装備の重さは子供を一人おぶってハイキングに行くようなもので重くてかなわない。基地をヘリコプターで出発した一行は森の中の広場のような所に下ろされ今夜のキャンプ地の地図を渡されてそこまで森の中を敵に見つからないように気配を殺して約40キロを踏破するのだ。先頭集団でスタートした佑奈はアメリカ人に比べて足が短いこともあり800mも行かないうちにグループから遅れ始めた。後続グループがどんどん佑奈を追い越してゆく。行軍中は私語厳禁なので兵士たちは親指を立てて佑奈を無言で励ましてくれた。4キロも歩くと佑奈の足は完全に棒のようになっていて自分のものではないように感じた。いつの間にか佑奈は全体から遅れて孤立していた。この訓練中は通訳のトミーはついてこず佑奈は英文の地図を見ながら先に行った兵士たちの足跡を付いて行くのだった。その日のキャンプ地にたどりつけなければリュックサックの非常食で食いつなぎ寝袋で野宿しなければならない。暖かい食事にありつくため佑奈は必死で森の中を歩いた。あたしアメリカまで来て何をやってんだろう。佑奈はふとそう思った。佑奈は涙を流しながらただただ歩いた。段々と空が茜色に染まってきて美しい夕焼けが木の合間から見えた。観光で来て森林を散策しているのなら「うわぁーっ、きれい」と言って写真を撮るのだが、今の佑奈にとってそれは夜が来るという現実を象徴していた。外国で夜の森の中をたった一人で歩かなくてはならないのだ。それはとてつもなく怖い。佑奈は足を速めキャンプ地へと急いだ。
完全に日が暮れた。敵に発見されるから明りは点けられないので佑奈はリュックサックから暗視ゴーグルを出して装着する。これをつければ星明かりを何万倍にも増幅して夜の森でも歩く事が可能なのだ。あやしげな野生動物の鳴き声がした。佑奈はびくっと動きを止める。しかし気配はない。再び歩き出す。
それから数時間。佑奈は彼方に明りを見つけた。その日のキャンプ地だ。佑奈は兵士たちに4時間遅れて到着した。兵士たちは拍手と口笛でこの日の行程を踏破した佑奈を暖かく迎えてくれ、
「ヘイ、ユーナ コングラッチレーション」
と背中を叩いて歓迎してくれたが佑奈はたたかれるたびによろよろした。その夜佑奈は女性兵士と同じテントで寝袋に入って寝た。
翌朝再び佑奈はその夜のキャンプ地の地図をもらい先頭グループで出発した。しかし次々と兵士たちに追い抜かれていきまた最後に取り残されてしまった。その後佑奈たちはロープを使い川を渡る訓練や、木の実や葉っぱを食べて食いつなぐサバイバルの訓練などを経て地獄の15日間を終えた。早い時期に脱落すると思っていた佑奈が遅れはしたものの踏破したことを兵士たちはみな祝福した。この15日間を経て佑奈は片言ながら兵士たちと英語でコミュニケーションが取れるようになっていた。
その半月後、中米のX国で軍事クーデターが起こりアメリカ大使館がクーデターを起こした軍部に占拠される事件が起こった。さっそくCIAは訓練途上ではあったがそれを切り上げて佑奈を出動させることになった。佑奈はゴードンに呼ばれて
「ユーナに任務の命令が来た。ユーナはX国で占拠された大使館を奪回することになった。2時間後に飛行機が迎えに来る。支度せよ」
「えーっ、まだ訓練中なのにぃ」
「ユーナに足りないのは実戦経験だけだ。トレーニングに丁度いいだろ」
「そんなぁ」
佑奈は基地から飛び立った。迷彩服にヘルメット、軽機関銃に各種の装備が入ったリュックサックを背負いX国上空からパラシュートで降下した。佑奈のX国での活躍は別のお話。
【あとがき】
上月佑奈と泉崎礼香いう女の子が好きなので第二弾を書きました。高田瑞穂の出番がほとんど無くて瑞穂ファンの皆様には申し訳ないです。筆者の軍事・スパイ方面の知識の無さが如実に出ている作品だと思いますがお気楽な読み物なので大目に見てください。もちろん米軍厚木基地で女子中学生をかどわかしてスパイにするようなことはしてませんのでこの作品はフィクションです。
古墳少女佑奈3へつづく。
古墳少女佑奈をまず読むと世界観がよくわかります。
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