
それから佑奈たち4人は生活指導室にすわらさせた。竹子は生活指導室に連れてこられ怒られると震えているのを隣にすわった礼香がだき抱え頭をなでてやる。絵里香は「モデルのあたしをこんなところに連れ込むなんて何考えてるの」とぶりぶり怒り、佑奈は「宿題あるのにぃ〜」と困惑している。転校生の絵里香はもちろん礼香と竹子は初めて生活指導室に呼ばれた。佑奈は1年生のとき左手首に腕輪をしているところを佐藤に見咎められここで腕輪を没収された過去がある。生活指導の佐藤先生が取り調べの刑事よろしく立っている。4人の担任も部屋の隅に控えなりゆきを見ている。
「いったいあの騒ぎはなんだ。泉崎、代表して説明しろ」
「あたしと佑奈と竹子ちゃんが下校していたら原先輩のとりまきの男子に無理やり公園に連れ込まれて袋だたきにあいそうになったんです」
「泉崎礼香、あんたなに言ってんの。モデルのあたしがそんな野蛮なことするわけないでしょう。先生、この嘘つき女の言う事を信じないで下さい」
「いいえ、先生。嘘をついているのは原先輩です。原先輩がとりまきたちに号令してあたしたちを襲わせようとしていました」
「先生、礼香の言う通りよ」
佑奈も口を出す。佐藤は
「きっかけはなんだ」
「あたしの彼を原先輩が力づくで横取りしようとしているんです」
佑奈が言うと絵里香が反論する。
「あたしがそんな節操のないことするわけないでしょう」
「原先輩『勝ったら古谷はもらうわよ』って言ったじゃん」
「原、お前はそうやって悪代官みたいに人の彼氏をとっちゃうのか」
「あたしの恋をこの上月佑奈が邪魔しているんです」
「なんですってぇ」
「この暴力女」
「一人じゃ勝てないからってあんなに大勢でかかってきたくせに」
「なによ」
「原先輩、『モデルモデル』って鼻にかけちゃってはっきりいってムカつくのよね」
「あたしのほうがきれいだからってそんなにジェラシー燃やさなくっていいわよ。どうせ上月佑奈にモデルは無理だから」
「あたしはモデルになんてなりません」
「『なれません』の間違いでしょ」
「二人ともいいかげんにしろ!」
佐藤がバンと机をたたくと竹子がビクっと身を震わす。礼香が
「佐藤先生、そんなに大きな声で怒鳴らないで下さい。竹子ちゃんがおびえています」
とたしなめると佐藤は咳払いをしてその場をごまかした。竹子が望まなかったので絵里香のいじめについてはこの場では礼香と佑奈は出さなかった。
「いいか、お前ら全員反省文原稿用紙20枚以上。一週間以内に出せよ」
「そんなぁ」
「悪いのは上月佑奈です。あたしは悪くありません」
この期に及んで絵里香は往生際が悪い。
「騒ぎを起こしたお前ら全員が悪い」
「悪いのは原先輩一人です」
佑奈が絵里香を指差して反論する
「4人そろって提出しないと吹奏楽部は無期限活動禁止だ」
「ひぇ〜っ」
「先生、それは筋違いだと思いますわ」
礼香が抗議する。
「お前ら全員吹奏楽部だろが」
「それはそうですけど…」
そう言われては礼香も形無しだ。
「お前ら全員提出しなかったら4人とも期末テストは受けさせないからな」
「それは…」
「ひどーい」
「モデルのあたしを脅迫する気」
「とにかく反省文を書いてこいよ」
「原先輩のせいですよ」
「うるさい、上月佑奈お前が悪い」
「また喧嘩するなら100枚にするぞ」
「わ、わかりました」
「それじゃあ仲直りの握手をしろ」
小学生じゃあるまいしアホくさぁと佑奈は思った。絵里香がモデルの営業スマイルを浮かべ
「ごめんね、佑奈ちゃん。これからは吹奏楽部の仲間同志仲良くしましょうね」
と右手を差し出してくる。いつもは「上月佑奈」と呼び捨ての絵里香が「佑奈ちゃん」ときた。佑奈は総毛立つ思いがした。
「原先輩、よろしくお願いします」
と困惑の表情を浮かべ握った佑奈の右手に絵里香はマニキュア塗るために延ばしていたツメを食い込ませた。絵里香と佑奈の争いに巻き込まれた礼香と竹子はまったくいい面の皮であった。
竹子はことのいきさつと自分と絵里香のトラブルに佑奈と礼香を巻き込んで申し訳ないという内容。
佑奈は絵里香が3人を公園に有無を言わさず連れ込んでとりまきを使って自分たち3人をぼこぼこにしようとし、さらに彼まで奪おうとしたという内容。
絵里香はモデルで美しい自分のことをねたみ何かとつっかかってくる佑奈と礼香と穏やかに話し合いをしようとしただけでとりまきの50人は佑奈がまた暴力に及ばないよう立会人として来てもらっただけで、佑奈が主張するように佑奈たちを襲わせようとけしかけてなどいないという内容。
礼香はまず騒ぎを起こして大塚中学校の先生方に手数を掛けたことへのお詫び。そして絵里香のとりまきに3人が公園に有無を言わさず連れ込まれとりまきの50人に襲われそうになったこと。その理由は絵里香が佑奈の彼氏を奪おうとして失敗したことによる絵里香の佑奈への私怨であり吹奏楽部とは関係ないこと。3人は一切反撃していないことをあげアンサンブルコンテストも近いので寛大な処置を求め結んだ中学2年生の書いた文章とは思えない内容であった。
この日以来絵里香はぷっつりと吹奏楽部に姿を見せなくなった。竹子へのいじめもやめた。絵里香としては佑奈にまた勝てなかった以上吹奏楽部にとどまる理由もなかった。しょせん絵里香は見栄で習っていたフルートがうまいのを見せつけたかっただけでみんなで努力して吹奏楽コンクールで金賞とろうなんて了見はなく、佑奈に当てこすりに入部したのだ。礼香は部長以下吹奏楽部役員にだけ絵里香の竹子へのいじめの件を話し役員の全員一致で絵里香の除名を決めた。
公園での対決以来絵里香のとりまきの数が日に日に減っていった。公園で絵里香はとりまきをけしかけるだけで自分は戦おうとせず、これ以上絵里香のわがままに振り回されるのにみんな嫌気が差したのだ。絵里香は大塚中学校でも女王様になりたかったのに佑奈と礼香が話題と人心を集め自分の周りには打算でくっついているとりまきしかいない。だから公園でのように旗色が悪くなるとすぐに逃げ出す。「佑奈と礼香、あの二人さえいなければ…」絵里香は日に日に佑奈と礼香への憎悪を強めていった。
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古墳少女佑奈と古墳少女佑奈2をまず読むと世界観がよくわかります。
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