
「あら茜ちゃん」
大塚商店街に買い物に来ていた上月佑奈の母 順子は一人で下校する長谷川茜に気付いて声を掛けた。
「あっ、佑奈お姉様のお母様こんにちは」
と上品に深々と頭を下げあいさつする。
「今帰りなの」
「はい、そうです」
「よかったらうちへ寄っていかない?」
「わーっ、いいんですかぁ」
茜は目を輝かせて喜んだ。
「ぜひいらっしゃいな」
「はい、お供します」
と順子と茜は連れ立って上月家に向かう。
上月家の玄関で茜はきちんと爪先をそろえて通学用の白スニーカーを脱ぎ
「失礼いたします」
と上がる。順子は初めて茜をゆっくり観察し泉崎礼香のようにじつに上品でしつけがしっかりとなされていると感じた。そしてなんでこんな子が佑奈みたいなドジで落ち着きのない娘を慕うのかが理解できなかった。
「茜ちゃんはオレンジジュースでいいのかな?」
「あっ、はい」
という短いやりとりの後順子はオレンジジュースのコップとクッキーの入った菓子器を茜の前に出した。
「いただきます」
と言った後茜はストローを使って上品にジュースを飲む。順子はきっとこの子はラッパ飲みなんて絶対にしないんだろうなと思った。また実の娘ながら佑奈とつきあうことで悪くならなければいいがと心配した。
「茜ちゃん家はここから近いの?」
「はい、うちも大塚町なんで歩いて3〜4分です」
「そうなんだあ。毎朝佑奈を迎えにきてくれてありがとね」
「いえ、佑奈お姉様はご迷惑に思ってらっしゃるみたいなんですが…」
「そんなことないのよ。茜ちゃんのお陰で佑奈は毎朝走らなくても遅刻しない時間に学校にゆくようになったんだから。ほんと茜ちゃんには感謝しているわ」
「そんな、お母様…」
茜は感無量という表情で順子を見た。
そこへ吹奏楽部の練習を終えた佑奈が帰ってきた。自分の物ではない白スニーカーが玄関にあるので高田瑞穂でも来てんのかな?と思いつつ居間にゆくと長谷川茜がいたので佑奈はギョッとした。
「なんであんたがあたしの家にいるのよ! 今日は姿が見えないから安心してたのにぃ」
佑奈はまなじりを吊り上げて茜をなじる。順子が
「大塚商店街で見掛けたからあたしが連れてきたのよ」
「なんでお母さんまでその子の味方するわけ? 信じらんない」
「いいじゃないの。佑奈を慕って来てくれてるんだから」
「あたしあなたのことを妹と認めてないから」
「そんな言い方することないでしょ」
佑奈は冷たく茜に言い放つと二階にある自分の部屋に上がっていった。
「佑奈お姉様ごめんなさい」
とだけ言うと茜は泣きながら上月家を飛び出していった。
*** 茜の日記 *************
今日佑奈お姉様のお母様に大塚商店街でお声を掛けていただいたの。
そしてお家にお招きいただいたの。
後から帰ってきた佑奈お姉様はなぜかとても
ご機嫌悪くておこられちゃったわ。
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古墳少女佑奈をまず読むと世界観がよくわかります。
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