小説の部屋


2007/9/15 脱稿

古墳少女 佑奈5 -古墳vs弥生-

その2

第3章 山奥村の惨劇

 夕食が済み食堂で娘たちがお茶を飲みながらおしゃべりに興じている頃ペンション<パンプキン>に静岡県警のパトカーがやってきた。中から本署の中村・三沢・花田3人の刑事が出てきて長谷川母娘と上月佑奈に任意で尋問したいと告げた。長谷川英子は
「いったい娘たちが何をしたというの?!」
と刑事に食ってかかるが中村は
「ちょっとお話しを伺うだけですから」
とひょうひょうとしている。
 この晩、山奥村に殺人事件が発生した。殺されたのは種村ナオ(85)で、代々この村の神社の神主を務めている家系の老婆だ。ナオは林の中で鋭利な刃物で袈裟掛けに斬られているのが村人により発見されていた。一手で惨殺する手際よさはかなりの手だれを連想させた。凶器は犯人が持ち去ったようで現場から発見されなかった。犯行の目撃者はいなかったが、昼間ペンション<パンプキン>に来た客の車を止めナオが口論していたのが別の村人により目撃されており、とりわけ名指しで非難されていた少女に刑事たちは強い関心を寄せていた。ちなみに犯行時ペンション<パンプキン>は夕食時で中尾家・長谷川家・上月佑奈はその頃全員が食堂で夕食を共にしていて相互にアリバイを確認できる状態であり、ペンション<パンプキン>から犯行現場へは車で20分はかかるので普通ならば中学生の娘たちは車を運転できないから容疑者から外されるところであるが上月佑奈にはナオに対して遺恨があるだろうから佑奈が無免許で車を運転したり共犯者に運転させて犯行現場を往復することも視野に入れて捜査している。
 中村と三沢はペンション<パンプキン>の一室を借りて上月佑奈を前にして事情聴取を始めた。
「今日君は被害者から疫病神みたいに言われてかなり腹を立てていたそうだね」
「たしかにあのお婆さんムカつくこと言ったから…」
「それで殺したんだね」
「えっ!」
「君がお婆さんを殺したんだよね」
「違います!」
「そうかなぁ、それが一番説得力あると思うんだけど…」
そこへ花田が入ってきて中村にメモを手渡す。中村は佑奈の尻尾をつかんだとばかりににやりとして目の色変え
「海老名署に君達の身元を照会したらおもしろいことを言ってきたよ」
「えっ?!」
「君は『古墳少女』なんだってねぇ。火を吹いたりできるそうじゃないか。妖術を使ったら離れた場所で殺人だってできるんだろうね」
「そんなことできるわけないじゃないですか!」
「それに君だけ家族でない」
「えっ!」
「なんで長谷川家の家族旅行にクラブの先輩とはいえ君が来ているのかい? 普通他人の家の家族旅行にはついてゆかないだろう」
「それは茜が無理に誘ったから…」
「妖術を使って誘うよう仕向けたのじゃないのか?!」
「そんなことするわけないでしょ! あたし本当は来たくなかったんだから」
「じゃあどうやって殺したんだ!」
「あたし何もやってない!」
「他にこんなことする奴はこの村にはいないんだ。お前しか考えられない」
「ひどい!」
佑奈は涙ぐんだ。

 中村は話題を変え一枚の写真を佑奈に見せた。昨日から行方不明の関口弥生の写真である。
「この子を知っているかね」
「誰、この子?」
「本当に知らないのかね」
「知りません」
刑事たちには本当に佑奈は知らないように見えた。しかし相手は古墳少女なので油断はしない。
「お前が殺してどこかに埋めたんだろ」
「はぁっ?! なんで会ったこともない子を殺して埋めるのよ」
「古墳少女ならそのくらい朝飯前だろ」
「信じらんない。それでも警察?!」
「いまここで二人を殺したことを認めたら自首してきたことにしてやるよ」
「だから殺してません」
「強情な子だな」
佑奈はこの刑事を殴ったろかと思ったけれどそんなことしたら警察署に連行する口実を相手に与えることになるからぐっとこらえた。刑事たちは佑奈を怒らせてボロを出させようとしたけれど佑奈はやってないから全くボロを出さなかった。警察は当初弥生がナオを殺して逃走したというシナリオで捜査していたが車の運転ができない弥生が村を出るにはバスに乗るか誰かの車に便乗するしかない。しかしバスにも乗っていないし誰も弥生を乗せたというものはいなかった。こんな山奥によそ者の車は滅多にこない。だからまだ弥生は村にいると考えるのが妥当だ。生死はともかくとして。

しかしナオを殺害したのは弥生である。より正しく言えば弥生にとりついている物が弥生の体を使ってナオを殺したのだ。ナオは弥生の異変に気付いてその正体を見抜きそれを封印しようとしたけれど弥生に斬られたのだ。林の中で偶然弥生に出会ったナオは弥生の様子がおかしいことに一目で気付いていた。
「あんた弥生ちゃんじゃないぞよ?」
「フフフ、よく見破ったとほめてやろう。しかしそれがお前の命を縮めることになったな」
「弥生ちゃんにとりつきし妖かしの物よ。今すぐ退散せねば封印するぞよ」
「笑止」
ナオは御幣を構え祝詞を上げる。弥生は手にしていた銅鐸を銅矛に変形させると「やぁーっ!」と間合いを詰めてナオを袈裟掛けに斬る。ナオはよけることもできず一撃で斬り倒されてしまった。

 刑事は未成年ということもあり佑奈を警察署に連行はしなかったが、ペンション<パンプキン>の前にパトカーを止めて佑奈が逃亡を図らないよう刑事を張り込ませた。またこの場での保護者である英子には
「村を出るときは必ず警察に連絡するように」
と言い残した。
「なんなの、あの刑事。すごくムカつくぅ」
上月佑奈はぶりぶり怒っている。話を聞いた長谷川茜も同様に怒って
「佑奈お姉様を疑うなんてどうかしてますわ。わたくしたちとずっと一緒にいましたのに」
「でも、種村のおばぁさんが殺されて関口弥生ちゃんも行方不明なんですって」
舞子がこわごわ言う。関口弥生は舞子にとってクラスメイトだから心配である。若葉がぽつりと言う。
「でもあの人が言った通りね」
「えっ?」
「若葉お姉様なんですの?」
「確かに殺されたあの人が言っていた通り人死にが出たわ」
「確かにそうですけど…」
佑奈は複雑な表情を見せた。若葉は
「でも自分が死ぬとはさすがにわからなかったみたいね」
と言って佑奈たちをギョッとさせた。さらに
「この村にまだ犯人が潜伏しているみたいだから一人では出歩かないようにしまょうね」
と言った。

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古墳少女佑奈をまず読むと世界観がよくわかります。

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