小説の部屋


2007/9/15 脱稿

古墳少女 佑奈5 -古墳vs弥生-

その4

第4章 山奥中学校吹奏楽部

 翌日4人の娘たちは約束通り山奥村立山奥中学校吹奏楽部を訪ねる。舞子は同じクラスの佐野仁美と約束していたのだ。舞子は学校に行くときは制服着用という決まりにならい紺のブレザーとジャンパースカートに白い丸襟ブラウスの制服を着ていた。佑奈たちは制服なんて持ってきていないから佑奈は灰色のパーカー、ピンクのロンT、デニムミニスカート。茜は灰色のカーディガン、水色のブラウス、緑のタータンチェックスカートという私立女子中学校の制服風の格好をしている。若葉は吹奏楽部に興味がないから別行動をとった。そして佑奈が振り向くと思い出したように木の陰に隠れるという隠れる気もないようなあからさまな様子で刑事が二人佑奈を尾行してきた。もっともこんな人気の少ない山奥では人込みにまぎれるなんてできないからどんなにうまく尾行してもすぐに気付かれる。佑奈は
「何あの刑事、わざとらしくさりげないふりしちゃって」
「ほんとですの。佑奈お姉様が悪いことするはずなんてないのに」
と茜も怒っている。佑奈が
「あんなに尾行がへたな刑事しかいないんじゃこの事件は迷宮入りね」
「そんな! 弥生ちゃんが行方不明なんですよ」
と舞子が非難するような目で佑奈を見た。
「それにしても通学路にコンビニ1軒ないのねぇ」
と佑奈が妙なところに感心している。道端にさびたバス停が立っていて佑奈が時刻表を見る。
「茜すごいよぉ。バスが1日に6本しか走ってないよ。休日になると4本になっちゃう」
と本数の少なさに感心している。これだけ本数が少ないうえに整理券方式で運賃も海老名市に比べて高いゆえに舞子は浜松のような都会に出ることはめったになく、県都 静岡市に行ったのも小学校の遠足で行っただけだ。それでも舞子はそれが当たり前の生活をずっとしてきたから不便に感じたことはなかった。山奥村には高校がないので高校生たちは朝のバスで登校してゆき、夕方のバスで帰ってくるという規則正しい生活をしている。乗り遅れるようなことがあると遅刻が確定し親に車で送ってもらう事態になるから必然的にバス停に10分前から並んで待つ習慣が身に付いているのだ。

 山奥村立山奥中学校は過疎で各学年1クラスしかなく吹奏楽部は受験で3年生が抜けて1,2年生13人しかいなかった。街までゆくのに時間もお金も掛かるから吹奏楽コンクールに出たことはなく、主に学校行事と村祭りで演奏する程度の活動である。
 舞子が音楽室をノックして入ると吹奏楽部の面々は丁度<エルクンバンチェロ>を練習しているところであった。3人を歓迎するため山奥中学校吹奏楽部は<アルヴァマー序曲>を演奏してくれた。トランペットの元気な出だしにクラリネットの旋律、のびやかな金管の和音が印象に残る演奏であった。ついで<宝島>アゴーゴベルの音で始まり、金管のイントロ、木管のメロディ、アルトサックス女子が立ちソロを吹く。金管パートが間奏でスタンドプレイをした。力強い演奏に佑奈たちは手拍子でこたえる。演奏後に舞子が佑奈と茜の二人を
「こちらが上月佑奈さん、そしてこちらが長谷川茜さんです。お二人は海老名市立大塚中学校吹奏楽部でクラリネットを吹いています」
と紹介すると部員たちから「おぉーっ!」と声が上がる。二人を交えて海老名市立大塚中学校吹奏楽部のレパートリーでもある<エルクンバンチェロ>を演奏しようということになった。佑奈は予備のクラリネットを借り受けて音出しを始めた。茜はまだ入部したばかりでクラリネットを上手く吹けないからパーカッションの小物に回り、吹奏楽部とは縁もゆかりもないけれど舞子もマラカスで参加する。顧問の指揮で<エルクンバンチェロ>が演奏される。金管のイントロに続き1年生一人だけのフルートパートの繊細なる演奏、木管による主旋律が続く。佑奈も使い慣れないクラリネットではあったが楽しそうに演奏に参加する。最後は金管の音で力強く終わった。
「わぁーっ、楽しいーっ」
そう言うとクラリネットパートの末席に座っていた佑奈はクラリネットパートの二人とがっちり握手し、ひいては吹奏楽部13人全員と握手した。舞子も吹奏楽部で演奏したのはこれが始めてだけれどその楽しさに触れ
「あたし吹奏楽部に入ろうかしら」
と言っていた。それから3人は練習半分、部員とのおしゃべり半分で楽しい時を過ごし正午すぎに山奥中学校を後にした。

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古墳少女佑奈をまず読むと世界観がよくわかります。

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