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とある土曜日。夕方から降り出した雨は23時を回ってもやむことがなくしとしとと降り続いていた。東京都西タマ市の市立博物館の資料室で学芸員の佐々木優子(28歳)は西タマ市内の高森3号墳(円墳 直径31m 高さ4.3m)から出土した人物埴輪を接合し復元していた。優子は埴輪に没頭していたので夕食もとらず雨が降り出したことにすら気付いていなかった。そのくらいこの人物埴輪は優子にとって魅力的であった。この人物埴輪はバラバラに壊れているものの全身がそろっており優子はわくわくしながら接合作業を続けていた。優子は少しひっ掛かっていた。古墳時代から現代に至るまでの間に古墳の上に並べられた埴輪が壊れてしまうのは当たり前のことである。しかしこの人物埴輪は作って間もなく人為的に壊されたのではないかと感じさせる壊れ方をしている。優子は古墳を築造した勢力間の争いで破壊されたのだろうと仮説を立てた。すると当時の西タマ市には二大勢力がいて争っていたことになる。日本書記や古事記には何も記録はないが、優子は大和政権に服属しない勢力の小競り合いか?と思った。優子はこの十日間毎日他の仕事をやりくりしてこの人物埴輪に向き合ってきた。それもようやく完成しようとしていた。
「さて、これが最後の1ピース。1700年ぶりに埴輪クンも復活できてうれしいでしょ」
と優子が人物埴輪に話しかけると人物埴輪はうれしそうな表情を見せたような気がした。優子がついに人物埴輪の接合を完成した。しかしそれは古代の人々が破壊して封印した邪悪な意思の宿る埴輪の復元であった。その人物埴輪はゴコーゴンという名であった。ゴコーゴンはうっとりとして自分が復元した埴輪をなでる優子から精気を吸い取り衰弱させ、優子の首筋に噛み付いてその生き血をすすった。ゴコーゴンは
「長きにわたり封印され身動きとれずにいたがこの女のお陰でしばらくぶりに世に出ることができたわい」
というと窓ガラスを突き破り夜の西タマ市へと消えていった。
深夜の西タマ市を人物埴輪が歩いているのを何人かの酔っ払いが目撃しているが酔っ払っているから新手のコスプレか?くらいにしか受け取っていなかった。ゴコーゴンは住宅街の一角に来るとそこで呪文を唱え手を組み替えて印を結んだ。その場所は霊的な力の集中する場所なのであった。すると土の中から手下の人物埴輪がにょきにょきとかいわれ大根が生えるように現れた。ゴコーゴンはさらに円筒埴輪を出現させて下っ端の雑兵埴輪たちに持たせてその場所を囲む半径700m程度の円を描くように配置させていった。円筒埴輪が定められた場所に配置されるとゴコーゴンは呪文を唱え印を結ぶ。すると円筒埴輪から強力なエネルギーが放出され西タマ市中心部の一角を覆うドーム上の結界になった。
夜が明けて人々が生活を始めると西タマ市は大騒ぎになった。西タマ市中心部の一角にドーム状の結界が一夜にして出現していたのだ。しかも強固な結界には誰も出入りすることが不可能であった。結界の中の様子も汚れた黄色のもやに覆われていて見ることができない。結界のすぐ内側に円筒埴輪らしい物が円を描くように並べられているのだけがうっすらと透けて見える。警視庁は「西タマ市異変対策本部」を設置し消防庁の特殊救助隊『ハイパーレスキュー』の出動を要請した。特殊救助隊が救難用のダイヤモンドを使ったカッターを使用して結界に穴を開けようとするが呪術的なそれに物理的な道具は効き目がなかった。
テレビや新聞といったマスコミは現場周辺に中継車を出し、朝ワイドの時間に結界をバックに生で全国に西タマ市の異変を知らせた。
「現場の木村さんどうぞ」
「はい、現場の木村です。西タマ市に突如出現した謎の結界は我々人類の侵入をかたくなに拒み続けています。内部の様子は以前不明で、そこに取り込まれた市民の安否が気遣われています」
「市民の安否は以前確認されていないのでしょうか?」
「いまだ結界内に突入はおろか中の様子すらうかかい知ることもできません」
「結界はどの様な成分でできているのでしょうか?」
「近付くことが許されないから直接手にとってみたわけではないので不明ですが、私には水晶のようなもの出てきているようにも見えます」
「一夜にしてこの結界はできたわけですが、だれがどの様にして作ったのでしょうか?」
「その辺については全くわかりません」
「市民生活にどのような影響が出ていますか?」
「西タマ市立のすべての小中学校は本日臨時休校となりました。西タマ市内の都立高校も同様の処置をとるということです」
「そうですか」
「京王線は現在西タマ市近くの一部区間で運転を見合わせています。あと、西タマバスは市内を通る路線を本日運休すると発表しています」
「交通にも影響が出ていますか」
「はい、現時点では原因がまるでわからないので休校やバスの運休が今日だけなのか、明日以降も続くのかはなんとも判断つかないようです」
「救助活動は難航しているみたいですね」
「消防と救急が待機しているものの、結界に入ることができないため手をこまねいて見ているだけという状況です」
「そうですか」
「先程自衛隊の災害派遣が決定されまもなく現地にヘリで自衛隊が到着する予定です。自衛隊は特殊なセンサーで内部の探査を行い救助方法を模索するようです」
「どのくらいの市民が結界内に捕らわれているのでしょうか?」
「住民登録から推計して推定1140人の市民が結界内に捕らわれている模様です」
と女子アナがめめったに見られない怪異現象を背に嬉しそうな笑みを浮かべ全国に語った。
警察と消防では手に負えず早々と都知事は自衛隊に災害派遣を要請した。ヘリで颯爽と西タマ市に現れた自衛隊はX線や赤外線、レーザー光線などを使って内部の様子の探査を試みたがまるで反応がなかった。結界はこれらの光線を吸収してしまい探知ができないのだ。災害救助用の特種車両を使って結界内に強行突入を図ろうとしたが結界を破ることができずこれも失敗した。窮余の一策で、結界の天頂部にロケット弾や戦車砲を打ち込んだが傷一つ付かなかった。はたして人類にはこの結界を破る術はないのであろうか? 現場に手詰まり感がただよっていた。
翌朝、日曜日の朝7時すぎ、神奈川県海老名市に住む上月利夫は突如番組が西タマ市の異変を報じる特番に切り替わり驚いた。そして結界のすぐ内側に円筒埴輪らしい物が円を描くように並べられていると聞いて確信した。そして大慌てで自宅二階の部屋にかけ上がりベッドでぐーすか寝ている中学2年生の娘の佑奈の布団を剥ぎ
「こらっ佑奈起きろ。お前今度は何をやった!」
と娘の両肩をつかんで揺すりながら詰問する。佑奈はまだ半分眠っていて
「ふぇ〜っ」
と言っている。
「お前今度は西タマ市で何をやった!」
「西タマぁ? お父さん何言ってんのよ」
佑奈は状況が飲み込めてない様子。
「とにかく下にこい!」
と佑奈の手を引いてテレビのある居間に無理やり連れていった。佑奈はつけっ放しになっているテレビに写された異様な結界を見て目が覚めた。
「えっ? なにこれ?! 朝から特撮?!」
佑奈は絶句した。
「いや、なんでも東京都西タマ市に夜が明けたら出現していたそうだ」
「ふ〜ん、あたしはよくできた特撮かと思ったわ」
「よく見てごらん『LIVE』と書いてある」
「ほんとだぁ〜」
画面右上に小さく生中継を示す『LIVE』の文字がある。
「さっきあの中に埴輪が並べられていると言っていた。佑奈、まさかこれはお前がやったんじゃないよな?」
「はぁ?、こんなのあたし知らないわ」
「本当にお前じゃないんだな?」
「あたし西タマ市なんて行ったことないわ。第一昨夜からずっと家にいたじゃない。どうして行ったことのない場所であんな事できるの?」
「お前の腕輪を使って遠隔操作でびび〜っと…」
「ひっどぉ〜い。お父さんはかわいい娘を疑うわけぇ? 信じらんなぁい」
「べっ、別に疑っているわけじゃ…。ただ聞いただけだよ」
利夫の歯切れが悪くなる。母親の順子が
「だけどね、お母さんも最初埴輪と聞いて佑奈がやったと思ったわよ」
「えーっ、お母さんまでそうゆうこと言うんだ」
「佑奈が普段から古墳で拾ってきた腕輪で変な術を使ってばかりいるからこうゆう時疑われるのよ」
「別にあたしだってすき好んで術を使っているわけじゃ…」
佑奈としてはあくまで外国の諜報員などに襲われた際の正当防衛の手段として術を行使しているのだ。でも佑奈の分が悪い。
上月家に電話がかかってくる。佑奈は居間から逃げ出すチャンスとばかりに電話に飛び付いた。親友の泉崎礼香からだった。礼香もテレビに移し出されている異様なドームを見て佑奈の仕業だと直感して電話してきたのだ。
「佑奈おはよう」
「あっ、礼香。テレビ見てる?!」
「それで電話したの」
「えっ?」
「あの結界って佑奈がやったんじゃないわよね」
「えーっ、礼香まであたしのことを疑うの?」
佑奈は礼香にまで父と同じことを言われてうんざりした。
「あたしじゃないわよ」
「ならいいんだけど。でもね…」
「なによ」
「さっき瑞穂から『あれは佑奈がやったんだ!』って電話がきたの」
「えっ?!」
「おそらく他の生徒たちにも電話で言いふらしているんじゃないかと…」
佑奈は絶句した。いくらおしゃべりだからとはいえ親友の高田瑞穂がそんな事をするなんて…。
「恐らく今頃は大塚中学校の全校生徒が佑奈がやったと思っているわよ」
歩く口コミ、高田瑞穂の暴走に佑奈は目の前が真っ暗になった。そして明日学校休もうと思った。
礼香との電話を切るとすぐに電話のベルが鳴る。今度は長谷川茜からであった。茜は佑奈の押しかけ妹(兄弟分のようなもの)であった。
「佑奈お姉様、大変なことが起こりましたの」
「西タマ市のこと?」
「そうですわ」
「まさか茜まであたしがやったなんて言うんじゃないでしょうね」
「さっき瑞穂先輩が電話でそう言ってましたがわたくし信じておりませんわ」
瑞穂は茜にもさっそく電話していたのかと佑奈は思った。
「やっぱりわが妹ね、お姉様を信じてくれるのね」
「はい、むしろ西タマ市に悪の古墳少女がいるのだと思って電話しましたの」
そう言われれば佑奈も納得がゆく。佑奈は何もしていないのだから古墳時代の呪力が使えるほかの誰かがやったに違いないと考えるのが妥当だ。佑奈は茜の推理に感心した。
「今からお宅に参りますわ」
「べつに今からこなくても…」
電話が切れた。茜は本当に来るつもりらしい。佑奈はあわてて二階の部屋にもどりパジャマからピンクのパーカーにデニムのクロプトパンツに着替えた。すぐ近所の長谷川茜は5分とかからずにやってきた。茜はデニム生地のワンピースを着ている。
「別に来てくれなくてよかったのよ」
「佑奈お姉様が心配ですわ」
「まさか茜はかかわっていないわよね」
長谷川茜も弥生時代の魔力を宿す銅鐸の持ち主なのだ。
「埴輪が建っていましたからあれは古墳時代のテクノロジーですわ。わたくしの銅鐸さんではあんなすごいことできませんの」
「いったい誰があんな事をしたのかしら。迷惑だわぁ」
「わかりませんわ」
ウーーーーーーー
サイレンを鳴らして神奈川県海老名市大塚町をパトカーが走る。なぜか警視庁のパトカーだ。そのパトカーは上月家の前に止まる。
ピンポーン、
チャイムが鳴る。利夫が出ると男が3人いて警察手帳を提示し
「警視庁の者です。上月佑奈さんご在宅ですね」
「うっ、うちの佑奈が何をしたと言うんですか」
「西タマ市の事はお父さんも知っていますよね」
「やっぱり… でもうちの佑奈は無関係です」
「ちょっとお話しを伺うだけですから」
「でも…」
「近所の方が見てますよ。中で話しませんか」
利夫が周りを見ると上月家の方を見てひそひそ話している近所の人たちが一斉に目を反らし家の中に隠れた。しぶしぶ利夫は刑事を中に入れた。刑事は早速佑奈に尋問する。
「君が古墳少女の上月佑奈さん?」
「はい」
「西タマ市のことは知ってるね」
「あたしじゃないですよ」
「ほう、いきなり否定するということは何か知っているのかな?」
「だって『古墳少女の上月佑奈さん?』って聞いたでしょ」
「でも君くらいしかあんなことできる人いないんだけどなぁ」
「きっとほかに悪の古墳少女がいるのよ」
「ほう、西タマ市に共犯者がいるということだね」
「なんで共犯者なんですか?! 西タマ市になんて知り合いはいません」
「昨夜から今朝にかけてのアリバイを聞かせてください」
「昨日は11時頃に寝てさっきお父さんに起こされるまで寝ていました」
「証人は?」
「両親です」
「身内の証言じゃアリバイにならないよ。つまり君は犯行時刻にアリバイがないというわけだ」
まっとうな女子中学生が深夜にアリバイがあるわけがない。夜遊びでもしていない限り第三者の証言なんて得られるはずもないではないかと佑奈は思った。
「でもあたしじゃないです。西タマ市なんて行ったことないんだから」
「ここから念力かなんかでビビ〜ッとやったんじゃないのかね」
「そんなことできません!!!」
佑奈がムキになって反論すると刑事は益々心証を悪くしたようだ。そこに刑事の携帯電話がかかってくる。
「ちょっと失礼」
と席を外しなにやら話し込んでいる。時折佑奈にチラチラと視線を向けて嫌な感じだ。そして佑奈と父の利夫に向かい
「ただいま有事特別措置法が発動されました。総理大臣の命により上月佑奈を徴用します」
「そんな、うちの佑奈はまだ中学生ですよ」
「法令に基づく処置です。この場合中学生だろうと関係ありません」
「あたし嫌です!」
佑奈はきっぱりと拒否をする。刑事は
「それなら公務執行妨害で逮捕します」
と二人掛かりで抵抗する佑奈に後ろ手に手錠を掛けた。佑奈が術を使って移送中に暴れられては大変なので口には呪文を詠唱できないようさるぐつわをかまされた。そして佑奈はパトカーに押し込まれた。
「佑奈お姉様に何するんですの」
と刑事につかみ掛かろうとする茜ははがいじめにされて抵抗を封じられた。
「佑奈お姉様ぁ…」
遠ざかるパトカーを見ながら茜はがっくりと膝をついた。近所の人達は
「あーあ佑奈ちゃんとうとう捕まっちゃった」
「きっと西タマ市の事件も佑奈ちゃんの仕業だったのよ」
「やっぱりねぇ、あたしは最初からそうじゃないかと思っていたのよ」
「あんなことできるのって佑奈ちゃんしかいないものね」
と噂した。
才能の限界を感じ第2章までで頓挫しました。
佑奈を乗せたパトカーは大塚中学校に入り佑奈は校庭に待機していたヘリに乗せられ西タマ市の現地対策本部に連行される。佑奈に結界を腕輪の術を使って破壊するよう言われたが佑奈は
「あたし関係ないもん!」
と拒否。しかし結界の中に彼氏の古谷の祖母の家がありそこに向かった古谷が消息を絶っており、おそらく結界内に取り込まれているようだとわかり佑奈は、西タマ市民を救うためではなく、彼氏を救出するという個人的な動機で参戦することとなった。
結界の前で関東各地の神社から集められた五百人を越える神官が佑奈が半紙にさらさらと書き付けた祝詞を詠唱する中佑奈も祝詞を詠唱し複雑に指を組み替えて印を結ぶ。神官たちは結界から発せられる邪気に当てられ次々と倒れていったがみな祝詞の詠唱に打ち込んでいるのでまるで周りのことなど目に入っていないようだ。
やがて結界の一部に変色が起こり佑奈は呪文を唱えて取り出した鉄剣で
「いやぁ〜っ!」
と突くと40センチ四方程度の穴が開いた。見守る自衛隊や警察から
「おぉーっ!」
という声が上がる。佑奈はそこからバックパックを最初に押し込み、這うようにして結界の中に入った。佑奈が入るのと同時に結界の穴はふさがり、神官たちは口から血を吹いて折り重なるように倒れた。
結界内には空気があり酸素ボンベも持ってきたけれど重いだけだから佑奈はその場に捨てた。バックパックを背負い古谷のの祖母の家を探しにゆく佑奈に無数の雑兵埴輪が襲いかかる。一体一体の戦闘能力は低いが無数に押し寄せることにより敵を消耗させる戦法をとる。
以下佑奈は騎馬埴輪など上級の埴輪たちと戦い、一騎打ちで佑奈はゴコーゴンを倒し古谷を助け出し結界を解いた。警察など共にマスコミが結界内に押し寄せると気を失った古谷に人工呼吸をする佑奈がおりその姿が新聞に載ったため佑奈と古谷はその後学校で冷やかしの対象となった。
埴輪帝国の埴輪たちは佑奈に恭順の意を示し、来なくていいと言っているのに毎朝佑奈を家まで迎えにきて登校に随伴し、茜は馬型埴輪に乗せてもらい大喜びした。それを近所の人達は薄気味悪そうに見ていた。
当初この映画は
古墳少女佑奈をまず読むと世界観がよくわかります。
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